座数とはなにか?

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 これは私の学部2年生終了時点での成績表です。人文・自然・社会が概ね良好で、語学と専門科目(現代では「学部基礎科目」のような名称のカテゴリーにある科目でしょうか)が酷いというのは、私個人の学習到達度を表しているというよりは、当時の成績の「つけ方」についてのカテゴリーごとの慣行の相違によるものなのかもしれません(と、独語、憲法概論、社会科学概論第一について全力で言い訳をしておきます)。
 上段部分の項目名が味わい深いです。「履修年度」、「授業科目名」の右隣りの「担当教官名」、独立行政法人になる以前のことですので教員は「教官」です。全国の国立機関である附属小学校や附属幼稚園などの教諭も同様に「教官」でした。また、複数の「教官」によるリレー形式の科目で、その氏名が省略されていることも趣きがあります。印字の余白が不足しているためなのですが、重要な情報ではないので、どうにか工夫してまで正しく表記する必要はなかったのでしょう。次に「判定」、これは現代の成績評価においてはあまり使われることがない言葉です。卒業を「判定」する、2段階でしか成績評価を行わない科目の合格/不合格を「判定」するといった限定的に使われている印象を持ちます。そして、一つ飛ばして「単位数」、語学と体育以外は4.0単位の設定です。これは週1回の通年科目(夏学期+冬学期)であったためです。語学と体育はいずれも週1回の通年科目ですが、おそらく現代と同様の単位数の計算をしていたために2.0単位の扱いになっていたのでしょう(今では半期1.0単位とするので、それを通年の科目とする場合には2倍の2.0単位です)。さて、この成績表の「単位数」には怪しい数値が掲載されています。お察しのとおり、1.3単位と0.7単位、これはいったい何なのでしょうか。


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 それに関連する謎が、先ほど一つ飛ばしたところにある「座数」です。当時、2年間で21.0座を取得すると2年間の「前期課程」の修了が認められて、小平キャンパスから国立キャンパスへの「進級」することになりました。19.0座以上21.0座未満の場合は「仮進(カリシン)」と呼ばれ、3年生として扱われて「後期課程」の履修を開始することができるものの、なるべく速やかに不足する座数を取ることが求められました。不足を埋めるためだけのために小平へ通うことになります。19.0座未満の場合は「残留」となり、2年生をやり直すことになります(数値が間違っていたらごめんなさい)。私はこの「座数」という制度が何に由来するのかがわからないまま、時を過ごしてしまいました。おそらく、


4.0単位=1.0座
2.0単位=0.5座


という等式が存在するようです。このことは通年科目ではなく半期開講科目がほとんどであった「後期課程」でも同様です。しかし、このルールに沿わない科目もあります。それが先ほど紹介した1.3単位と0.7単位の科目です(なお、卒業論文は成績表へA~Dまでの評語が記載されるものの0.0単位かつ0.0座でした)。


保健体育実技(1年) 1.3単位=1.0座
保健体育講義(2年) 0.7単位=0.5座


保健体育実技(1年)は通年科目でした。語学と同じく2.0単位相当となりそうですが、0.7単位を減らされています。他方、半期開講科目であった保健体育講義(2年)は1.0単位相当でとなるのではなく、0.7単位という扱いです。保健体育講義(2年)はわざわざ「講義」という科目名称になっています。大学設置基準上のカテゴリーで「講義及び演習」と「実験、実習及び実技」は1単位45時間の内訳ルールは異なりますが、それとは関係なく0.7単位の算出根拠がわからないのです。たとえば、次のような計算が成立するでしょうか。


保健体育実技(1年)
45時間×1.3単位=58.5時間
 授業時間学習と授業時間外学習を2:1として
 うち39時間、1回1.3時間(通年30週)を授業時間とします
 (1.5時間に満たないし「単位時間」換算をしていないけど、♪細かいことは気にしない)
 残り19.5時間を授業時間外学習とします
保健体育講義(2年)
45時間×0.7単位=31.5時間
 授業時間学習と授業時間外学習を実技と同様に2:1として
 うち21時間、1回1.4時間(半期15週)を授業時間とします
 (1.5時間に満たないし「単位時間」換算をしていないけど、♪細かいことは気にしない)
 残り10.5時間を授業時間外学習とします


仮にちょっとあやふやな計算でよいのだとしても、次に「座数」が問題になってしまいます。単位数とは違って「座数」は減らされていません。学習時間にかかわらず、通年であれば1.0座、半期であれば0.5座というルールが保健体育にも適用されているようにみえます。単位数の計算は面倒なので「座」を使うのだという説明された記憶があるものの、今となっては2の倍数や4の倍数の計算が難しいというのは奇妙なことです。また、単位数と「座数」との関係がわかったとしても、そもそも「座数」の意味が理解できていません。たとえば、講座制の「座」なのか、同じくドイツ語のJitzなのか、当時の資料に来歴が書かれていますでしょうか。
 これを書こうと思いついた理由は、3万人の大学生が学んだ 恋愛で一番大切な“性”のはなしを読んだためです。一時期「ヒューマンセクソロジー」(学生による愛称は「ヒューセク」、大人気講義であり、毎週講義後の学生によるツイートが荒ぶることで有名)という講義が開講されていて、この書籍で書かれていることが教えられていました。私の頃にはヒューセクはなかったと呟いたところ、いや保健体育講義(2年)として小平でやはり大人気講義として開講されていたと仏文学者からご指摘を頂きました。そんな講義が0.7単位だったというのはちょっとさみしいことです。