群馬大学学びのリテラシー(2)「若者について考察する」

 本年度、私が担当している「若者について考察する」(「学びのリテラシー(2)」)は1年生向けの初年次教育に相当する科目である。全学的に開講される「学びのリテラシー(2)」では毎年10月から2月(全15回+試験週間)にかけて、次に示す学習を行うことになっている。

少人数のゼミ、講義、演習で行い、各教員が専門としている分野を中心に、課題の見つけ方、分析の仕方、発表の方法、文章のまとめ方など、これから4年間ないし6年間にわたる大学での学びにおいて求められる基本的な方法を修得させる。さらに、各学問分野に共通の思考力・判断力・表現力等を養い向上させることを目指す。
カリキュラム | 群馬大学 大学教育センター

 1年生は自らの所属する学部・学科にかかわらず、興味・関心のある授業題目を選んで抽選に参加する。理系の学生が中世ヨーロッパの文学作品に取り組んだり、ジェンダー論に立脚してキャリアを考えたりすることもよくみられるようである。2年生以降、荒牧、昭和、桐生・太田の各キャンパスに分かれて学習することになる学生は、この1年生のうちだけは他の学部・学科の学生と一緒に荒牧で履修を進めることになる。どの授業題目の履修者も25~40名と制限されていて、特別の事情がある場合にはさらに履修者を少なくすることになっている。上記の説明では言及されていないものの、アクティブラーニングを導入することが強く推奨されている。アクティブラーニングのポイントは「外化」であり、それは「書く・話す・発表するなどの活動を通して、知識の理解や頭の中で思考したことなど(認知プロセス)を表現すること」と説明される*1。現時点で群馬大学では、教室での対面授業とリアルタイムのオンライン授業を併用している。「若者について考察する」は1年生に対して通学機会を設けるためという意図から対面授業の方式を採用している。COVID-19(新型コロナウィルス感染症)の流行以前より、1年生は他の学部・学科の学生と知り合いになりたいという強い希望をよく明言していたこと、依然として対面授業の機会が少なく交流するきっかけが必ずしも十分ではない状況もありえることから、「若者について考察する」は以下のように進めることになった。

第1回 履修者40名を小グループにわける(90分)
 アクティビティ1 声を出さないグループわけ(1)
  学生の背中に小さな丸いシールを貼る
  学生は声を出さずに同じ色のシールごとに集まる
   シールは5色なので8名ごとの小グループができる
 アクティビティ2 声を出さないグループわけ(2)
  小グループ内で誕生日順に一列に並ぶ
  その際、声を出してはいけない
  まばたきの回数で月、日を教えてもよい
   たとえば、右目が月、左目が日を表す
   手で片目を隠すとまばたきをしやすくなることもある
  誕生日順の前半4名で新たな1つの小グループ、後半4名で同じく小グループができる
 アクティビティ3 お絵描き伝言ゲーム
  小グループの4名のうち代表者1名が二宮へ「お題」を聞きに来る
  代表者1名は声を出さずに「お題」を絵として描く
   「お題」の例:TikTokを見るトランプ大統領
  他のメンバーは、描かれつつある絵を見て「お題」が何であるのかを当てる
  正解であれば、別のメンバーが代表者として二宮へ「お題」を聞くに来る
   所定の時刻になるまで繰り返し行う
 まとめ 4名の小グループごとに第3回から第6回までレポーター1名、書記1名を決定する
  レポーターは文献についてのレジュメを作成、LMSにアップロードする
   当日はレジュメに基づいて説明を行う
  書記は当日のディスカッションを記録して、後日議事録を作成、LMSにアップロードする

 授業時間外学習 次回までの次のことを行う
  LMSへ今日の「感想」を入力する
  指定文献の序章と第1章を読んだうえで、いろいろと自分で考えてみる

第2回 『分断社会と若者の今』のうち序章「分断社会を生きる若者たち」、第1章「現在志向から捉える現代の若者」を読む

 二宮がレポーターとなって序章と第1章の説明を履修者全員に対して行う
  要約、疑問点、論点、専門用語の説明(ネットで調べられるもの)
 履修者全員が疑問点や論点などを教室前方の黒板に書き出す
 小グループごとに二宮作成のレジュメ、黒板を見ながらディスカッションを行う

 授業時間外学習 次回までに次のことを行う 
  LMSへ「考察」を入力する
  指定文献の第2章を読んだうえで、いろいろと自分で考えてみる
  レポーターはレジュメを作成してLMSにアップロードする

第3回 同書第2章「若者の従順さはどのようにして生み出されるのか」を読む
 前半45分
  小グループごとにディスカッションを行う
   レポーターはレジュメに基づいて説明を行う
   書記はディスカッションを記録する
 後半45分
  レポーターと書記が別のグループへ移動する
  その他のメンバーは同じ場所に留まる
   移動した2人は、元のグループでのディスカッションの内容を紹介する
   そのままディスカッションを継続する
  レポーターと書記は元のグループへ戻る

 授業時間外学習 次回までに次のことを行う 
  LMSへ「考察」を入力する
  指定文献の第3章を読んだうえで、いろいろと自分で考えてみる
  レポーターはレジュメを作成してLMSにアップロードする
  書記は議事録を作成してLMSにアップロードする



第6回 第5章「若者の人生評価」を読む&履修者40名を新たな小グループにわける(90分)
 前半40分
  いつものように学習を進める
 後半50分
  アクティビティ1 声を出さないグループわけ
   40名が出身地or出身高校所在地の南北順に一列に並ぶ
   その際、声を出してはいけない
   ジェスチャーで情報を伝えてもよい
   「答え合わせ」の後、前方から順に1から10までの数字を言う
    その数字が新しく所属する小グループの仮称となる
  アクティビティ2 クイズへの回答
   二宮から手渡されたクイズへ、メンバーと協力して回答する
    クイズの例:レポートの参考文献(和文書籍)の正しい表記?
  アクティビティ3 新聞紙タワー
   二宮から手渡された新聞紙4枚を使ってタワーを作る
   たとえ所持していたとしても、糊やハサミなどの道具を使ってはいけない
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  まとめ 4名の新たな小グループごとに次回以降のレポーターや書記1名を決定する
 
  授業時間外学習をこれまでと同様に行う 

以上が「若者について考察する」(「学びのリテラシー(2)」)全15回の前半である。後半については、後日紹介する。