大学と社会

10月1日内定式における翌春就職予定者の拘束

毎年10月頃、大学教員が企業における内定式に対して不満を表明することがある。(1)まだ働いていない学生を無給で拘束するのはおかしい、(2)授業やゼミ・研究室(卒業論文)を優先するべきである、(3)企業は日頃から大学に対して教育を充実するように要請して…

伝統校の「自治」について考えてみる

執筆者の皆さまからお送り頂きました。ありがとうございます。深志の自治 地方公立伝統校の危機と挑戦信濃毎日新聞社Amazon 明治時代から続いている高等学校(高校)の「自治」について検討する意欲的な研究である。教育社会学において高校の研究は花形の一…

大学数の増加に関するコメント

資産家の財テク・学校法人設立で増加した私立大学。戦後これだけ大学は増加。しかも少子化だとわかっている1990年代から2010年までの増加が甚だしい。大学卒業しても稼げぬ人が増加するのも納得。これだけの大卒を吸収しうる雇用、経済発展もないままに単に…

友だちのような関係性を利用するビジネス

ネットワークビジネス(マルチ商法、ねずみ講)についての報道を見かけた。以前、それに関連するようなメモを書いたのでここに転載する。 いまどきのSNSには「めっちゃすごい人」がたくさんいる。お金をたくさん儲けていそうだったり、人脈が豊富そうだった…

実務家教員に関するアンケート調査

科学研究費助成事業基盤研究(C)「大学教育を担う「実務家教員」に関する基礎的研究」(研究代表者:二宮祐)による研究にプロジェクトの一つとして、2022年2月~2022年5月に「大学における実務教育に関する全国調査」というアンケート調査を実施しました。…

高等教育論セミナー2021秋「戦後日本の高等教育政策②1971~1991」

高等教育論セミナー2021秋「戦後日本の高等教育政策②1971~1991」 大学・短期大学にお勤めの事務職員/教員、高等教育論に関心を持つ大学院生を対象としたセミナーを開催いたします。仕事として高等教育に関わることになった/これからそうなるものの、これ…

群馬大学卒業生の皆さまへご案内

群馬大学では、卒業生の皆さま百数十名を対象としたインタビューを実施しています。お勤め先、または、大学から連絡を差し上げる場合がございます。皆さまのご意見をもとにして、大学教育の改善を行うことを目的としています。インタビューはご都合に応じて…

「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」

就職と体育会系神話 大学・スポーツ・企業の社会学作者:束原 文郎青弓社Amazon 私(二宮)じしんが大学生の頃も体育会系は就職に有利であると言われていた。しかし、私の周囲にはだからといって、就職のために体育会系の部活動に入る学生はいなかったような…

学部1年生の新しい人間関係の形成

フレッシュパーソンが新しい友だち作りに戸惑うのは例年のことである。高校生のとき知り合いになっていた人たちとは、趣味・関心、話し方・方言、ファッション、生活時間、お小遣いの有無・学費負担者の有無・バイトの必要性、勉強への取り組み姿勢、将来展…

コンピテンシー論の再考―要素主義を越えて

大学教育の成果として心理学や経営学で研究されてきた「コンピテンシー」を用いることの難しさ/虚しさについて、院生の頃からずっと考えてきた。そこで、今年の大学教育学会第42回大会(2020年)において、「大学生を対象とするコンピテンシー・ディクショ…

【ご案内】高等教育論セミナー2020秋

このたび、大学事務職員、大学教員、大学院生・ポストドクターの皆さまを対象として、大学教育の職業的レリバンスに関する研究の中間報告会「高等教育論セミナー2020秋『若者の仕事と大学教育―人文系学部・学科出身者の語りから』」を行うことになりました。…

若者・大学生論学外自主ゼミ第1回

2019年春、若者・大学生論の学外自主ゼミを行います。★文献 1)本田由紀編、2018、『文系大学教育は仕事の役に立つのか:職業的レリバンスの検討』ナカニシヤ出版 https://honto.jp/netstore/pd-book_29179035.html 2)福島創太、2017、『ゆとり世代はなぜ転職…

「"就活で学業がおろそかになる"はデタラメ」と言い切れるか

headlines.yahoo.co.jppresident.jp「"就活で学業がおろそかになる"はデタラメ」という記事を読んだ。日本経団連が2021年春入社予定となる学生の就職活動について「採用選考に関する指針」を策定しない、すなわち、採用活動開始時期の自由化を認めることを発…

初期キャリアの「生きづらさ」

nyaaat.hatenablog.com nyaaat.hatenablog.com お盆休み、ニャートさんの記事を読み返していて、修士2年の頃を思い出してつらくなってしまった。新卒で入社した企業を辞めて大学院に進学したものの、研究の難しさに挫折して再就職先を探していた。その時期は…

東洋経済のネット記事「教育困難大学」について

「教育困難大学」に来る学生の残念な志望動機 必然的に起きる「5月病」に苦慮する教員たち https://toyokeizai.net/articles/-/219604この記事の筆者は修士を取得なさっているようなので、「動機の語彙」という概念を聞いたことがあるかもしれない。「動機」は個…

Cherrystone Clam

「大学第一世代(First-Generation)」という言葉がある。両親の最終学歴が高校段階以下である大学生の抱える固有の困難に着目する概念である。主に米国でこの困難についての「問題」が「発見」されて、場合によっては必要な支援を行うという対応が図られて…

国立大学教員数(続編)

衆議院議員河野太郎公式サイトに掲載された国立大学教員の給与総額について、平成13年度が最大値で、平成25年度まで継続して減少、その後やや増加するという経緯を辿ることができる。では、具体的にはどのようなことが生じていたのだろうか。 図1は教員数の…

国立大学教員数―増えた分野はどこか

www.taro.org 衆議院議員河野太郎公式サイトに掲載された国立大学教員数に関して、実感に合わないというお声を複数聞いた。そこで、私なりに整理しなおしてみた。 表1は3年ごとに実施される「学校教員統計調査」のうち、「大学等の部―教員個人調査―年齢区分…

『反「大学改革」論』本が出ます

6月中旬に『反「大学改革」論:若手からの問題提起』が刊行されます。 (出版社さんから掲載許可を頂いた書影です) https://honto.jp/netstore/pd-book_28478516.html (honto:本の通販ストア) 本書の趣旨と問題意識 「これから大学はどうなっていくのだ…

研究プロジェクトのウェブサイト

大学における新しい専門職に関する研究科研のプロジェクトのサイトをつくりました。研究成果等の発信を行う予定です。 「第三の領域」についてどちらかというと研究者の立場からみているという限界があるので、職員からみたそれについては不十分であることが…

第2新卒の状況についてのもやもや

この数年、調査先の企業でいわゆる第2新卒を積極的に採用しているというお話しを伺う機会が度々あった。確かに、第2新卒に特化した転職情報サイト(たとえば、https://re-katsu.jp/career/)や、同じく特化した有料職業紹介サイト(たとえば、https://mynavi…

先日、科研費基盤研究(C)が採択されたという通知を頂きました。タイトルは「高等教育新興プロフェッションの養成メカニズムに関する実証的研究」で、研究期間は平成28年度から平成31年度までの4年間を予定しております。 研究目的は次の通りです。 本研究…

昨年、全国の大学・短大のキャリアセンター(就職支援担当部署)の皆さまに「採用テストに関するアンケート」をお願いいたしました。その節はご協力を賜りましてありがとうございました。 その集計結果を掲載した「採用テストに関するアンケート2015報告書」…

表題に「いわゆる」を冠したのは、高等教育論の分野ではこの言葉をあまり使わないからである。研究者によってはその代わりにボーダーフリーという言葉を用いることもある。しかし、これもまたある予備校作成の入試難易ランキング表で使われ始めたのであって…

http://d.hatena.ne.jp/morinaoto/20150728/ 日本教育社会学会第67回大会課題研究1「戦後の教育政治を問い直す」(2015年9月10日)についての短いメモである。本課題研究はまず3人の登壇者がそれぞれに報告を行った後、2人のコメンテーターからの質疑に応答…

松本美奈「取材ノートから」『IDE現代の高等教育』No.573 http://ide-web.net/index.php http://setapapa.net/20150804/ ここで紹介されているのは、おそらく日本高等教育学会第18回大会である。そして、私は同じく紹介されている大学院に関する部会に参加し…

https://sites.google.com/site/saiyotest/ 採用テストに関するアンケート 2015 全国の大学・短期大学のキャリアセンター(就職支援担当部門)の皆さまにご協力頂いたアンケートにつきまして、集計結果の概要を公開しました。ご多用の時期にもかかわらず、ご…

現在の大学のありかたをめぐる議論は,ダイエーの作った流通科学大学や,日通の作った流通経済大学がどれほど経済界から高い評価を受けているのかを検証すればよい。— 西山教行 (@jnnNishiyama) 2015, 6月 18 「現在の大学のありかたをめぐる議論は,ダイエ…

教員A「この提出物は締め切りを過ぎてから提出されたものだよね。それに提出物としての要件をいくつか満たしていないようだけれども」 学生「申し訳ありませんでした。次からは気をつけます」(そして、深くこうべを垂れる) 教員A「いや、謝ってほしいので…

昨日の(1)の続きである。 投影法の検査による選考は問題外として、質問紙法についてもまだまだ検討しなければならないことがたくさんある。拙論でも言及したことであるが、そもそも質問紙法、とりわけその中でも性格検査についてどれだけの人事担当者がそ…