警備業の分析視角

警備業の分析視角

コ・メディカルに偏った勉強をしてきたので、それとは異なる(準)専門職について知識を得る。

まず、プロフェッションの特性として挙げられる「クライアント概念の拡大」「被雇用」「直接未来形成」という新しいプロフェッションサービスに、警備業はすべて該当している。そして、そのような専門職は、被雇用者として分業化された業務に対して狭く深い知識と技量で取り組む新しい専門職であって、全般的な仕事をするには不向きな人材として扱われることになる。
しかしながら、専門職には他からの指示を受けないという意味での自律性が確保されることが多いが、警備業においては該当しない。専門職の自律性には「否定型の自律性」と「組織化された自律性」の二種類があるが、多くの専門職が安定性の高い後者であるのに対し、警備業は物理的隔離という文脈でなされる前者である。「否定型の自律性」では、他の職業手段(ママ:おそらく正しくは「職業集団」)による競争・干渉・評価・指示から保護する公的制度はまったく見出されないが、警備業においても低賃金と不安定就労を強いられ、過当競争や法的な齟齬がみられていることから、「否定型の自律性」に該当することになる。これはむしろ、専門職とはみなされないカテゴリーである。
308-309頁

本全体としては、射程を異にする社会学の複数の概念が縦横無尽に用いられているために、必ずしも理解は容易ではなかった。しかし、専門職論として焦点を絞って読んでみると意義深い。他の専門職の指示を受けるコ・メディカルやパラ・リーガルとは異なる(準)専門職の特徴が浮き彫りにされていて、プロフェッション研究に対する示唆に富むのである。