GPAの卒業要件化に関連して、その数値が低いことをテーマとする紀要論文をどうにか仕上げた。まだまだ不十分な点は残されているのだが、とりあえずはこの2年間ほど考えていたことをまとめたつもりである。大学における学業不振の原因を厳しい入学試験に合格できているからこその学生の努力不足、さらにその努力不足の原因であるとみなされる「こころの『病い』」に求めることの不適切さを示した。学内共同センターの功罪を述べたうえで、「こころの『病い』」主因説という局地的な支配的言説の相対化、「素人」の教職員の素朴な親切心ゆえの専門家一任主義の相対化、を試みたのであるのだが果たして成功しているであろうか。
この原稿を書き終えてすぐ、メンタルヘルスに関するFDの案内を頂いた。テーマは「発達障害の理解と支援」である。案内によると「学生生活不適応(低GPA、トラブルメーカー、メンタル不調、就職困難)の原因は、発達障害が原因であることが少なくない」そうだ。「低GPA」の原因が「発達障害」であることが少なくないというのは本当のことだろうか。私はそうしたデータを見たことがない。そうではなくて、私たちがあらゆることがらに関して過度の「医療化」に巻き込まれているだけではないのか。このFDで確認してみたいポイントである。

成績評価の厳正化とGPA活用の深化―絶対的相対評価/教員間調整/functional GPA (高等教育ハンドブック)

成績評価の厳正化とGPA活用の深化―絶対的相対評価/教員間調整/functional GPA (高等教育ハンドブック)

ところで、GPAの算出方法についてはこの「functional GPA」はよくできている。ただし、GPAを学生に対する管理統制の手段として理解するという前提を置いたうえで、その算出方法が優れているにすぎない。繰り返して主張していることであるのだが、知識伝達という営為に関してGPAの有効性が明らかにされているわけではない。