お忙しい方は文章を読む時間がないだろうし、かつて所属した工学部では教員であっても短い文章(メールであれば3行以内)しか読む習慣がないということをお聞きした。そこで、エグゼクティブ・サマリーとして書いておく。
数年前に携わった仕事の一つにGPAを卒業要件に課す制度の導入というものがあった。この制度は、
「教育の質保証とは卒業する学生の質を保証するという意味だ」という誤解
に基づいたものであった。そこで、私はそうした残念な誤解によって導入される制度の危うさを指摘しつつ、制度がもたらす悪影響をなるべく減らす仕組みづくりを行っていた。それは、
「教育の質保証とは端的に言えば、大学における教育活動を大学内部や大学外部から評価して向上させる仕組みである」
という理解に沿って進めた仕事である。FDやIRもこの考え方に応じたものであって、そこに「学生の質を保証する」などという厄介な目標が加えられることはない。
他方、仄聞する限りでは、GPAを卒業要件に課す制度は廃止されるようである。その理由は第1に、4学期制/1講義2ヶ月間制の導入によって、GPAがそのねらい通りに機能するために必要な履修撤回の時間がないことや、教務の手続きが間に合わないこと、第2に、学生が難しい講義を履修することを避けるようになった弊害をあらためる必要があることらしい。しかし、これらは導入前から想定されていたことにすぎず、実際には他に理由があるのではないかと考えている。また、わずか4年、在学中に教務に関する重要なルールが変更されることによって不利益を被ったのは誰か。それは、このエグゼクティブ・サマリーではないところで書く予定である。