ケースメソッド教授法入門―理論・技法・演習・ココロ

ケースメソッド教授法入門―理論・技法・演習・ココロ

専門職研究の続きである。
ケース・メソッド教授法について、よくまとまった文献である。これまでの多くの文献は、理論と実践の二兎を追ってしまっていて、それぞれに中途半端な印象があった。理論としては、アンドラゴジーとの関係をどう考えればよいか、また、「学びの共同体」概念で必要十分なのかどうか、もう少し考えてみたいところではあるものの、おおむね納得できるところである。実践としては、そのまま一般的な(ケース・メソッドとは関係なく)FDに活用できそうである。金田准教授や北大路専任講師の失敗例は、ケース・ライターの腕の見せどころである。大学教員NGビデオを見るよりも、はるかにおもしろい。身につまされる教員も少なくないだろう。私は、ゼミがうまくいかないときを思い出していた。
ところで、参加者に対する理解、ノンディレの重視といった独特の思想について、現在検討しているところである。この文脈でノンディレが出てくるのは驚きである。次の学会で良い報告ができるだろうか。白熱教室JAPANのKBS編では、組織をまとめる力を「人間力」としか表現できないもどかしさが伝えられていた。誰もが理解しているのだろうが、「人間力」では何も言ったことにならない。ケース・メソッドの面白さは、そのもどかしさに接近しようとするところにあるようにみえるのだ。