法学部における実習などのプログラムが意図するもの

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日本インターンシップ学会紀要『インターンシップ研究年報』23号が届いた。次の論文が法学部におけるアウトカムについて考察するための勉強になった。かつて言われたように「ツブシガキク」から良いということではない、法学部で学習することによって得られるものについてである。


坂巻文彩、2020、「法学部における職業統合的学習をもとにした大学の類型的考察―修得が期待される能力、正規科目としての位置づけ、担当教員の特徴に着目して」『インターンシップ研究年報』23、pp.1-9


職業統合的学習とは、稲永の整理によれば「目的を持ってデザインされたカリキュラムの中で理論と職業実践とを統合したアプローチ」のことである。本論では職業統合的学習を操作的に「インターンシップ」、「模擬裁判」、「職場体験学習」、「フィールドワーク」、「海外研修」としている。そのうえで、全国の学士(法学)を授与している111大学へアンケートを送付して、51校から得られた結果を分析している(なお、行われている多変量解析とこの回収数との問題については、詳しい方に対して確認が必要となるかもしれない)。結論の一部は次のとおりである。

多重応答分析の結果、2つの次元、「職業統合的学習の実施ー非実施」「実践能力修得期待ー非期待」を見出した。大学は、3群に類型化でき、それぞれの群で特徴がみられ、大学の職業統合的学習の現状が明らかとなった。
第1群は、実践能力の修得を期待しているグループで、特に、社会的能力、応用的能力等の修得を期待している点に特徴がある。多くの大学で、実務経験のある教員も担当している。
第2群は、実践能力の修得の期待が低いグループである。特に、応用的能力の修得の期待が低い傾向にある。ただし、学習探求能力の修得に関して、3群の中で、もっとも、修得の期待が高い点が特徴である。大半の大学で、学術型教員が担当している。
第3群は、職業統合的学習を実施していないだけでなく、能力修得に対する期待も低いグループである。
p.7

これらの結論は実のところ日常的な理解の範疇に収まるものである。しかし、職業統合的学習という枠組みによってカリキュラムの特徴を把握しようとする試みはとても勉強になった。そのうえで、気になってしまうことが複数あった。
まず、第1に日本の大学において、ほんとうに「目的を持ってデザインされたカリキュラムの中に」インターンシップやフィールドワークが位置づけられているかどうかは不確かである。意図されたカリキュラムなのか、意図されてはいないものの結果としてその結論を導くようなカリキュラムになって(しまって)いるのかはわからないだろう。第2に本論の目的に関することで、大学を類型化することにどのような意味があるのか私には掴めなかったことである。たとえば、その類型によって職業統合的学習の「効果」が変わるといった知見を見出すことができればよいのだけれども、類型化じたいを目的とすることの意義を打ち出す必要があるだろう。第3に、第2の類型化に関連して、多変量解析の必要性についてである。質的に異なるデータを一緒に扱いたいためにこの方法が採用されているのだけれども、結局のところ結果として採用された2つの軸は新たな視点を提供するものではない。私としてはクロス表からわかることとの違いがわかりたいような印象を持った。