Myers–Briggs Type Indicator (MBTI) に関するご連絡

 講義の本題に入る前の「マクラ」としてMBTIブームに言及したところ、学生から「先生のMBTIを教えて」というリクエストを頂いた。MBTIとは何であり、それに対する多様な批判については、MBTI - Wikipediaをご覧頂くとして、いちおうの回答は次の写真である。

 これは私が21歳のときに受検したSPIの結果表のうち「性格類型」の部分である。大事なところは隠しておいた。当時のSPIにおける「性格類型」はMBTIを利用していて、このように採用側に受検結果がフィードバックされていた。このSPIは「性格類型」の他、「行動的側面」、「意欲的側面」、「情緒的側面」、「能力的側面」、「職務適応性」から構成されている(なお、現代のSPIはバージョンアップされているため、この通りではない)。MBTIとSPIの関係については、総合検査SPIの開発経緯 : 1960年代から1990年代までを対象として | CiNii Researchとしてまとめたことがある。企業によっては「性格類型」を採否の判断、採用する場合の配属部署の判断などに利用していた。かつてSPIを積極的に利用していた企業に配布されていた「SPIハンドブック」(リクルート人事測定事業部編、1985、『総合検査SPIハンドブックーすぐれた人材の発見と育成のために』(非売品)全384頁)によれば、私の「性格類型」が多い職はウエイトレス、バスガイドである。このハンドブックは難解な心理検査を企業の採用担当者に向けて平易に説明するようになっているためか、当時の読売巨人軍の選手の「性格類型」を紹介している。人気のあったプロスポーツの選手像と「性格類型」を結び付けてもらうという試みなのだろう。私と同じ「性格類型」のジャイアンツ選手は中畑清柴田勲である。若干のショック。ゼッコーチョーとか、ポーカー賭博での謝罪会見にトランプ柄のセーターを着用するとか、学生の皆さんは親戚の年長者に往時の巨人について尋ねてみてください。なお、このハンドブックは「性格類型」のみならず、「行動的側面」などの結果を見ながら、求職者に対してどのような面接を行うべきかについてのアドバイスが示されているために、当時の採用活動の実態の一部を垣間見ることができる。また、MBTIの説明書の一つ(サンドラ K. ハーシュ、ジーン M. クメロウ、2010、『MBTIタイプ入門ー職場編』JPP)によれば、私の「性格類型」は「親しみやすく快活」、「自然と人を引きつける」、「やり取りが活発」、「常識に基づいた代替案を提供することに喜びを見出す」そうである。この説明を見て、実際の私を知る皆さまはどう思うだろうか。もし、違和感があれば、それこそがMBTIやそれに類する性格検査の問題なのかもしれない。なお、説明書にも記されているとおり、MBTIは一定の訓練を受けた有資格者(MBTI認定ユーザー)しか実施することができない。「人権にかかわる問題を生じかねません」という注意書きも付されている。インターネット上のMBTIを鵜呑みにしてはいけないのだろう。
 初発の学生のリクエストからはずれてしまうものの、このような性格検査が特に若者の選抜・配置に利用されてきた歴史や、これからもそうであろうということが私の関心の一つである。
sakuranomori.hatenablog.com
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このようにかつて関連する内容に言及したこともあった。現代の議論に照らしてみると、ジョブ型雇用ではなくメンバーシップ型雇用であるからこそ、特定の仕事を適切にできるかどうかというよりは、学歴・学校歴をふまえたうえで性格の特徴に選抜・配置の際の評価軸が置かれてきたということになるだろうか。もう少し整理が必要である。