漂流する発達障害の若者たち―開かれたセイフティーネット社会を

漂流する発達障害の若者たち―開かれたセイフティーネット社会を

表面的には集団の中で適応的な行動をとれるようになってはいるが、それが成功体験、達成感にはならず、むしろ苦しみとなるような状態を、私は「負の社会性」と呼びたいと思います。(102頁)

「負の社会性」とは、進むも退くも地獄となるような努力なのです。(105頁)

本書は体験談に基づいて発達障害について検討したものであるが、一般的な「コミュ力」重視論に対しても豊かな示唆(=反論)を提供しているように思う。たとえ大学におけるある種のプログラムによって、あるいは、ファーストフードのアルバイトによって「コミュ力」が身に付いたからといって、それらが必ずしも自己評価を高めることにつながるわけではない。努力すればするほど自己評価が低くなってしまうということはよく理解できる。
また、認知行動療法に対する違和感も正当なものである。たとえば、A. R. Hochschild の文脈周辺からの批判は容易だが、クライエントの立場からの批判がもっとあっても良いのだろう。
自閉症スペクトラムの分類は雲を分類するぐらい難しい、この説明は覚えておきたい。