- 作者: 光永悠彦
- 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
- 発売日: 2017/02/20
- メディア: 単行本
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何かを測定したり評価したりする際には繰り返し読み直して参考にするべきテキストです。
私の問題関心としては、第1に、高等教育論の分野において何らかの教育(内容・方法)と学生の成長(知識・技術・いわゆる「汎用的」能力など)を関連させて検討するというときに、杜撰な方法を取っている事例がよくあることです。対象を適切な方法で測定、評価できているといえるのか、不安に覚えることがあります。第2に、高大接続、新しい種類の入学試験に関してテストバッテリをどう組むのか、そもそもその専門家はどこにいるのかという問題です。この専門家の問題については現在研究しているところなのですが、あまり良い展望を見出すことができていません。筆者は次のように述べています。
大学入試センター研究開発部がもっている試験に関するノウハウは、高大接続システム改革会議における議論にはほとんど生かされていないというのが筆者の正直な感想です。それは、高大接続システムに携わる専門家の中に、テスト理論に精通している者が少数であることをみれば明らかです。テスト理論から得られる知見は、入試にも多くのメリットをもたらすことがわかっていますが、それらの知見を前提知識として共有する姿勢の欠如によって、このような事態に至っているのではないでしょうか。
194頁
テストバッテリについても、筆者は国家公務員採用試験の事例を丁寧に解説しています。民間企業についても少しだけ触れられています。おそらく大学の入学試験も多面的な評価を行うためにテストバッテリを組むことになるのでしょう。しかし、どのような組み方が適切なのかについては、まだ研究が浅いような印象を持っています(私が知らないだけなのかもしれません。これから勉強します)。
最後に、テストにまったく関心がない方に対しても、「コラム1「日本的テスト文化」(42-43頁)」だけはお勧めします。0点や満点に特殊な意味が加えられることや、新作問題ばかりが使われることなど、私たちにとって当たり前のテストに関する習慣が実はそうでもないということに気付かされます。