授業ってつまらないよね

 著者からお送り頂きました。感謝いたします。
 タイトルは刺激的です。そもそも学校とは何であるのか、そして、何ではないのかについて考えてみたい場合の入門書となっています。

この本では、おそらく一般の皆さんが考えたこともないこと、知らなかったことがいろいろと書かれていると思います。生徒や保護者として見る教育や学校と、専門的な学問である教育学の視点から見る教育や学校とは、少し違っているからです。だから、教育や学校について、「知ってる/わかっている」以外のものを見つけていただく読み方をしていただけば、きっと面白い気づきがあると思います。
13頁

 私(二宮)は公開講座などでお話しをする機会があります。そこで聴衆の皆さんによって「知られている/わかられている」であろうことに言及すると、とても嬉しそうなお顔を拝見することがあります。ご自身の認識が研究者によって追認されたことになるからでしょう。しかし、せっかくの機会なのですから「知ってる/わかっている」以外のことに着目できると良いのかもしれません。たとえば、この本の第2章「学校の目的と機能」では、学校についてのあれこれの法律が紹介されているのと同時に、教育を対象として研究を進めることでそうした文章で書かれたきまりごとだけではみえないことがみえてくることが説明されています。私は児童、生徒、学生が「「まずいこと」を学んでしまう」(73頁)という観点を以前から興味深く捉えてきました。皆さんも学校の空間や時間の中で、教科書に書いているわけでもなく教員から教えられたわけでもないことを半ば「勝手に」学習したことがあるはずです。さて、それはどんなことでしょうか。
 そして、そもそもこの本のタイトル自体がとても学問的であるのもおもしろいです。学校の「現場」では先生方の創意工夫によって楽しく、わかりやすい授業が行われていることもあるでしょう。それはそれとして素晴らしいことです。たとえば、文部科学省教育委員会、個々の学校が「授業なんてそもそも退屈なものなんですよ」なんて絶対に言わないし、言えないはずです(塾や予備校などはご商売のためにそうした宣伝をするかもしれません)。しかしながら、学問のレンズを通してみると退屈にしかなりようがない理由がみえてくることになります。さらに教育学では、学校はその退屈さを乗り越えるための営為の特徴や、その乗り越え方が及ぼす良い影響・悪い影響などについても研究されてきました。文中で引用されている本や論文が次に読むべきものになるかもしれません。