読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

第2新卒の状況についてのもやもや

この数年、調査先の企業でいわゆる第2新卒を積極的に採用しているというお話しを伺う機会が度々あった。確かに、第2新卒に特化した転職情報サイト(たとえば、https://re-katsu.jp/career/)や、同じく特化した有料職業紹介サイト(たとえば、https://mynavi-job20s.jp/)では、魅力的な仕事が掲載されているようである。今年も新卒採用は「売り手市場」のようなので、第2新卒もまた活況なのかもしれない。このような情勢について、新卒採用や中高年の転職等に比べて研究が少なく、何となく気になっているのである。


企業からすれば、前者の転職情報サイトであれば、募集情報の掲載料とエントリーシステムの利用料の合計30万円~200万円/1ヶ月程度を支払う必要があり、その場合には適した人物がエントリーするかどうかはわからない。後者の有料職業紹介サイトであれば、これは私の理解がさらに曖昧なのだけれども、おそらく掲載料やシステム利用料は無料である一方、1人の転職が成功した時点で、その成功を導いた人材紹介コンサルタントへの「成功報酬」として当該転職者の年収の20~30%の費用が発生するはずである。たとえば、年収が500万円であれば、その25%として125万円を企業が有料職業紹介事業者へ支払うことになる。企業からすれば、人材紹介コンサルタントが自社に適する求職者を紹介してくれるので、かつ、前者の転職情報サイトのような不確かさがないので安心である。
しかし、この有料職業紹介事業のビジネスモデルが好ましくないように見えるのは、その「成功報酬」の仕組みが転職を強いることになっていそうだからである。仮に、人材紹介コンサルタント自身の年収が550万円であったとしよう。これもうろ覚えの知識で申し訳ないが、俗に年収の3倍の売り上げが企業の存続にとって必要であるという。少し割り引いて2.5倍だとしよう*1。もし、そうだとすると人材紹介コンサルタントは年間1,250万円の売上げがノルマになる。先ほどの架空の転職事例から得られる報酬は125万円であったから、年間約10人を転職させることがノルマであるといえる。1ヶ月に1人弱の転職斡旋である。以上の試算が妥当かどうかは専門家の意見を聞かねばわからないものの、他者を転職させればさせるほど儲かるのだから、転職する必要のない社会人まで転職させようとすることもあるのかもしれない。
他方、第2新卒当事者にとっては、転職情報サイトの利用であれ、有料職業紹介サイトの利用であれ、実は大学生のときの就職活動より楽であるといえる。細かいことを書かなければならないエントリーシートはあまりなく、グループ面接もないことが多いだろうし、個人面接の回数もそれほど多くはないかもしれない。さらに、有料職業紹介サイトを使えば人材紹介コンサルタントから適切な(そうではないこともあるようだけど)アドバイスを提供してもらえる。そもそも1度は就職しているので、大学生の頃よりも仕事を探すことへの戸惑いは少ないだろう。そのため、私としては最初の就職が必ずしも希望どおりではなかったとしても、第2新卒でのチャンスは少なくないと言いたいところなのである。大学における一部のキャリア教育において、それに学生募集のためにより良い就職状況を宣伝したいという動機が相俟って、大学では最初の就職こそに焦点を絞った動機付けが図られることもあるのだけど、そもそも、いわゆる「終身雇用」が成立していたのはある時期から現代までの、その中でも極めて限られた層にすぎないわけで、もう少し気長にキャリアを構えた方がよいのである。とはいえ、しかしながら、有料職業紹介事業によって、無駄な転職を勧められるかもしれないので、なんだか歯切れが悪くなってしまうのである。


http://www.jil.go.jp/institute/research/2017/164.html
そして、JIL-PTの調査(シリーズNo.164若年者の離職状況と離職後のキャリア形成
(若年者の能力開発と職場への定着に関する調査)を見る限り、これは通説どおりなのだけれども、より規模の小さい企業への転職が多いようである。特に、大卒・引卒では大企業から中小企業への移動は大学・大学院卒の特徴だということである(図表8-4、8-5)。また、私にとって意外だったのは(それだけ私がバイアスのある見方をしていたということなのだけれども)、退職してからすぐに仕事が見つかるというわけではない点である。早期離職であるほど不安定になるようなのだ(図表8-3)。


特に結論があるわけでもなく、もやもやしたことを書いてみた。

*1:バックオフィスをあまり必要としないので3倍は高いという指摘を頂いた