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国立大学法人と労働法

国立大学法人と労働法

著者は労働法学者であり、政府の規制改革委員会の参与等を務めてきた。使用者の立場で国立大学法人における労働法の問題を列挙している*1。私は下記のようなことをあまり知らなかったので勉強になった。

ジンキクッパー、オツナナヨン。法人化前の国立大学においては、このようなある種の符丁ともいえる言葉が、人事・給与担当者の間で飛びかっていた。
ジンキ人事院規則を意味することはまだわかるとしても、クッパーが同規則の九−八(初任給、昇格、昇給等の基準)を意味し、オツナナヨンが「教育職俸給表の適用を受ける職員の職務の級及び俸給月額の決定等について」(昭和三十九年給実乙第七四号)を指す(なお、同名のオツゴーナナロク(昭和六十二年給実乙第五六七号)もあるが、実務ではオツナナヨンが重視された)ことは、現場の実務担当者でないと、およそ理解できない。
さすがに、法人化後はこのような言葉を耳にすることは少なくなったとは言うものの、内規等を通じて、法人化前とそれほど異ならない運用が現在も続いている。
47頁

公務員と民間との違い、大学における教員・職員・大学院生・オーバードクター・(いわゆる)外国人・派遣職員などそれぞれのあまりにも複雑すぎる雇用形態、労働契約法の改正(改定?改悪?)などを背景として複数の問題が生じている。私の身近にも数件の現在進行中の案件が存在している。使用者の考え方を理解しておかねばならない。
ところで、ある問題を検討する際に次のような説明が示されている。

正社員には職能給、非正社員には職務給というように、賃金体系が双方の間で異なっている企業や法人(そうした企業や法人は、実際にも珍しくない)の場合、勤続年数が増すにしたがって、両者の賃金格差は次第に拡がっていく。正社員の賃金は、職務遂行能力の向上に伴い、昇給していく(いわゆる習熟昇給)のに対して、非正社員の賃金は、職務=仕事が変わらない限り、昇給することなく、フラットなまま推移するからである。
こうした状況のもとでも、採用後数年間であれば「均衡」は何とか維持できるものの、それを過ぎると「均衡」の維持が著しく困難になる。たしかに、時間給のアップを通じた待遇の「改善」は可能とはいえ、拡大する賃金格差を相殺するに足る「改善」までは到底期待できない。だとすれば、「均衡」が崩れる一歩手前で、雇用関係を終了するしかない。そういう話なのである。
324-325頁

これらの指摘には複数の論点が隠されているようにも見える。続きは講義で、かな。

*1:「オピニオン・リーダー」として紹介されているのが竹村健一日下公人渡部昇一である(209頁)