文部科学省「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」の配付資料をいまさら眺めている。以下、気付いたことをメモ程度に。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/061/attach/1353679.htm

よくまとまっていて勉強になるのが、上記第5回配布資料3「これまでの議論で指摘された主な論点」である。教養教育はともかくも「一般コンピテンス等」が教育可能なものとして取り上げられているのが現代的だ。複数の対立軸があるようで、それを整理するのが大変なようだ。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/061/attach/1354926.htm

具体的なイメージとしては、上記第9回配布資料4「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する基本的な方向性(案)」である。基本的考え方を読むと、この新たな高等教育機関は、職業専門高校(専門高校、昔の言い方では職業高校のこと)、高等専修学校(中学卒業後に進学する「専門学校」のこと)の出身者を主たる受け入れ対象としつつ、普通科総合学科卒業者も「配慮」してその対象とする、ということのようである。私は専門高校の関係者が委員にいないことから、それとは切り離した機関を想定していたので大きく誤解していたことになる。配布資料を眺める限りでは、現在の専門高校の「強み」と「弱み」が把握されていないようなのでやや心配になってしまう。
上記論点には挙げられていないのだけれども、この機関は教育再生実行会議第5次提言で主張された「社会・経済の変化に伴う人材需要に即応した質の高い職業人を育成する」ことを目的としているのと同時に、比較的厳しい設置基準、認証評価や第三者評価などの外部評価といった質保証のための仕組みが設けられるようである。しかし、この両立は難しそうである。実際にどれほど「即応」という表現が適切なほど分野別の人材需要が変化するのかはよくわからないけれども(たとえば、今年は美容が1,000人減少、代わりにパラリーガルが2,000人増加、昨年は介護が3,000人減少、代わりに電気が1,000人増加ということがあるのかどうか)、質保証の仕組みを厳しくすればするほど労働市場へ「即応」することは困難になる。
また、この会議では複数の委員が資料を提出していて、ネット上で話題になったものもある。私はそれとは異なる、第8回配布資料1「池田委員提出資料」(PDF)が学校経営の点で特に勉強になった。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/061/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2015/01/27/1354584_1_2.pdf

有名な新潟の学校法人の代表者によるものである。職業教育の議論の中に「地方在住の学生の要望」を入れるのは意思決定のゴミ缶モデルのようなことなのだけれども、「地方創生の観点」を高等教育政策に反映させるというのは全総以降の開発計画を思い出してみれば新奇な提案というわけでもない。
人材の「量」と「質」のトレードオフという伝統的問題に加えて、「即応」と「質保証」のトレードオフ問題の落としどころはどの辺りになるだろうか。