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先日の日本高等教育学会課題研究2「日本の大学院教育を考える(1)―第2期拡張期の帰結―」は100名を超える参加者をお迎えしました。丁寧に議論を深めて頂いた皆さまに感謝申し上げます。




当日は「教員から見た社会科学系大学院教育の現状」というタイトルで報告を行った。そこで紹介したことの一つが、〈(教員の)自己認識〉としては大学院における教育内容・方法の工夫は「同僚による大学院修了者の評価」「企業等による大学院修了者の評価」とはあまり関係がないという傾向の存在であった。ところで、そもそも、そうした工夫はそもそもどのような機関において実施されているのか。
用いるデータは当該報告と同じく、2013年10月〜12月に行われた質問紙調査によるものである。回答者は主に社会科学系の大学院修士課程を担当する教員である。『全国大学一覧』(文教協会)をもとにして調査実施を研究科長へ依頼、許可を得られた研究科へ質問紙(無記名、自記式)を郵送した。配布数10,582 部、有効回収数1,058部、有効回収率約10.0%であった。なお、この調査は JSPS 科研費 25285239 の助成を受けたものである。
教育内容・方法のうち、「リメディアル・補習教育」「外国語による授業」「プレFD(大学院生対象の教授法の研修など)」「高度教養科目」に着目して、それらと大学院の属性をクロスしてみる。


【リメディアル・補習教育】 
設置者(p<.05) なし あり 合計
国立(n=511) 88.1% 11.9% 100.0%
公立(n=72) 86.1% 13.9% 100.0%
私立(n=435) 82.5% 17.5% 100.0%


専攻の入学定員 なし あり 合計
10人以下(n=309) 87.4% 12.6% 100.0%
11〜20人(n=232) 84.9% 15.1% 100.0%
21〜30人(n=125) 79.2% 20.8% 100.0%
31〜40人(n=120) 87.5% 12.5% 100.0%
41〜50人(n=70) 84.3% 15.7% 100.0%
51〜60人(n=36) 88.9% 11.1% 100.0%
61〜70人(n=25) 96.0% 4.0% 100.0%
71〜80人(n=24) 75.0% 25.0% 100.0%
81人以上(n=56) 80.4% 19.6% 100.0%


専攻の設立年 なし あり 合計
〜1948年(n=34) 91.2% 8.8% 100.0%
1949〜1959年(n=64) 89.1% 10.9% 100.0%
1960〜1969年(n=32) 90.6% 9.4% 100.0%
1970〜1979年(n=56) 87.5% 12.5% 100.0%
1980〜1989年(n=66) 84.8% 15.2% 100.0%
1990〜1999年(n=213) 89.7% 10.3% 100.0%
2000年〜(n=469) 81.7% 18.3% 100.0%


【外国語による授業】
設置者(p<.001) なし あり 合計
国立(n=510) 62.9% 37.1% 100.0%
公立(n=75) 76.0% 24.0% 100.0%
私立(n=419) 76.2% 23.8% 100.0%


専攻の入学定員(p<.001) なし あり 合計
10人以下(n=307) 82.7% 17.3% 100.0%
11〜20人(n=230) 77.0% 23.0% 100.0%
21〜30人(n=125) 58.4% 41.6% 100.0%
31〜40人(n=119) 69.7% 30.3% 100.0%
41〜50人(n=72) 38.9% 61.1% 100.0%
51〜60人(n=36) 63.9% 36.1% 100.0%
61〜70人(n=25) 64.0% 36.0% 100.0%
71〜80人(n=24) 66.7% 33.3% 100.0%
81人以上(n=56) 33.9% 66.1% 100.0%


設立年(p<.001) なし あり 合計
〜1948年(n=34) 35.3% 64.7% 100.0%
1949〜1959年(n=64) 48.4% 51.6% 100.0%
1960〜1969年(n=32) 68.8% 31.3% 100.0%
1970〜1979年(n=56) 62.5% 37.5% 100.0%
1980〜1989年(n=66) 80.3% 19.7% 100.0%
1990〜1999年(n=212) 76.4% 23.6% 100.0%
2000年〜(n=466) 72.1% 27.9% 100.0%


【プレFD(大学院生対象の教授法の研修など)】
設置者(p<.01) なし あり 合計
国立(n=506) 82.0% 18.0% 100.0%
公立(n=71) 93.0% 7.0% 100.0%
私立(n=429) 84.4% 15.6% 100.0%


専攻の定員(p<.05) なし あり 合計
10人以下(n=306) 88.9% 11.1% 100.0%
11〜20人(n=229) 83.0% 17.0% 100.0%
21〜30人(n=123) 82.9% 17.1% 100.0%
31〜40人(n=118) 83.1% 16.9% 100.0%
41〜50人(n=71) 81.7% 18.3% 100.0%
51〜60人(n=36) 72.2% 27.8% 100.0%
61〜70人(n=25) 76.0% 24.0% 100.0%
71〜80人(n=24) 70.8% 29.2% 100.0%
81人以上(n=55) 74.5% 25.5% 100.0%


専攻の設立年 なし あり 合計
〜1948年(n=34) 82.4% 17.6% 100.0%
1949〜1959年(n=63) 82.5% 17.5% 100.0%
1960〜1969年(n=32) 81.3% 18.8% 100.0%
1970〜1979年(n=55) 81.8% 18.2% 100.0%
1980〜1989年(n=66) 86.4% 13.6% 100.0%
1990〜1999年(n=212) 88.7% 11.3% 100.0%
2000年〜(n=460) 82.2% 17.8% 100.0%


【高度教養科目】
設置者(p<.05) なし あり 合計
国立(n=508) 71.7% 28.3% 100.0%
公立(n=72) 79.2% 20.8% 100.0%
私立(n=429) 77.6% 22.4% 100.0%


専攻の定員(p<.01) なし あり 合計
10人以下(n=307) 80.5% 19.5% 100.0%
11〜20人(n=230) 76.1% 23.9% 100.0%
21〜30人(n=122) 73.0% 27.0% 100.0%
31〜40人(n=119) 71.4% 28.6% 100.0%
41〜50人(n=70) 77.1% 22.9% 100.0%
51〜60人(n=36) 50.0% 50.0% 100.0%
61〜70人(n=25) 72.0% 28.0% 100.0%
71〜80人(n=24) 62.5% 37.5% 100.0%
81人以上(n=56) 66.1% 33.9% 100.0%


専攻の設立年(p<.01) なし あり 合計
〜1948年(n=34) 67.6% 32.4% 100.0%
1949〜1959年(n=63) 85.7% 14.3% 100.0%
1960〜1969年(n=32) 78.1% 21.9% 100.0%
1970〜1979年(n=55) 81.8% 18.2% 100.0%
1980〜1989年(n=66) 80.3% 19.7% 100.0%
1990〜1999年(n=211) 80.6% 19.4% 100.0%
2000年〜(n=463) 69.1% 30.9% 100.0%



「リメディアル・補習教育」は私立、「外国語による授業」は国立/専攻定員81人以上/設立年1959年以前、「プレFD(大学院生対象の教授法の研修など)」は国立/専攻定員51人以上、「高度教養科目」は国立/専攻定員51人以上/設立年1948年以前/設立年2000年以降で、それぞれ「あり」ということが多いようである。少なくともそうした教育内容・方法の工夫は、国立(または、場合によって私立)、専攻の定員が多い、設立年が古い(または、かえって新しい)ところで行われている傾向がある、すなわち、専攻の属性に左右されていそうなのである―分野別にも相違があるはずなので別途検討する予定である(たとえば、会計やMBAにリメディアル・補習教育が多いなど)。これまでの大学院教育に関する主張は専攻の定員が10人以下であったり、設立が2000年以降であったりする数多くの機関のことを念頭に置いてきただろうか。資源に恵まれた機関―たとえば、プレFDが有名な機関を思い出してみよう―のことばかりを取り上げてきたのではないだろうか。
そして、今頃になって気づいたことがある。調査全体を通じて「加熱」に関することばかりを尋ねてしまっていて、「冷却」について焦点を絞った設問を用意できなかった。とりわけ、アカデミックキャリアに関する「冷却」のメカニズムがいかなるものなのか、大きな課題が残されていそうなのだ。