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『教育政策オーラル・ヒストリー 教育改革と文部科学省
『教育政策オーラル・ヒストリー 教育改革と教育団体・マスメディア』
(『政権交代に伴う教育政策過程・内容の変容に関する実証的研究』成果報告書―平成24年度〜平成27年度科学研究費助成事業若手研究(A))


信州大学の荒井英治郎先生より頂戴いたしました。ありがとうございました。



既存のオーラル・ヒストリーとの違いは、「若手」を対象者に含めている点である。文部科学省への入省10年以内の職員に対する聞き取りは、「若手」の仕事の流れを克明に明らかにしているという点でホワイトカラー研究としても有意義であるようだ。
特に勉強になったのは、会計系コンサルティング企業を経て文部科学省に入省した職員を対象とした聞き取りである。仕事の進め方がまったく異なるという。前職においては仕分けされた仕事が「上」からやってきて、それを済ませてそのまま「上」に返すという段取りが形成されていたのに対して、現職では新入の職員であっても重要な書類が仕分けされずに渡されて、多くの職員が情報を共有している、すなわち、「線」ではなく「面」で仕事をしているという。省庁の仕事の進め方は冗長であるものの、その一見すると無駄で非効率なプロセスに何かしら意義があるようなのである。
一方、中堅層以上を対象とした聞き取りについては、(言うまでもないことであるが)先行研究との違いがどこに表れているのか、今後丁寧な整理が必要である印象を持った。そのなかでも興味深いのは、黒羽亮一の学制史に対する評価である。

例えば、「『学制八十年史』はいいです」とある。僕もこの通りだと思います。これはよくできていますけれども、『学制百年史』は厚くなり過ぎました。それが紛争のころで、教育学者など外から見る人が入っていなくて、百年史の編集委員には、僕のような日本経済新聞社会部長が入ったりしたくらいだからタカが知れています。天城勲次官のときに始まり、できたときには村山松雄次官になっていますが、全部各局の寄せ集めなのです。だから厚くはなりました。その前に『学制九十年史』という薄いのが出ています。あれと八十年史と合わせて足したようなもので、この辺からバランスが取れていません。
『教育政策オーラル・ヒストリー 教育改革と教育団体・マスメディア』28頁

百年史のつまらなさの理由、なるほどである。そして、いつものことだけれども、やはり高等教育懇談会の転向の理由は私学助成の開始という通説が崩れそうにない*1
ところで、教育政策の政策過程の現代的特徴の一部が明らかにされる一方で―「新しい公共」や「熟議カケアイ」政策への言及は、私に対する問いの投げかけでもある(涙)―、既存の御厨貴らのオーラル・ヒストリー研究に対してどのような貢献をしたことになるのであろうか。この点については、今後の論文に期待したいところである。

*1:現代の「大学の数が多すぎる」論の主張者は、もちろん高等教育懇談会の議論をふまえているのだろうか。