教育 2014年 04月号 [雑誌]

教育 2014年 04月号 [雑誌]

雑誌『教育』4月号の特集2は「大衆化する大学の苦悩」であった。そのうち、〔論考2〕児島功和「『ノンエリート大学生』の教育と支援」はユニバーサル段階へ移行した時代における大学像の一面を事例をもとに活写している。

調査からは、ノンエリートたる若者にとって大学での勉強や大学生活になじむこと自体が大きな課題であり、友だちや教員など、学内の人間関係が大きな支えとなることが見えてきた。そして、そうした関係がきっかけとなり、認識を深め発展させるさまざまな経験を積むことへとつながっていた。
80-81頁

この知見は強く頷けるものである。しかしながら、だからといって、(おそらく筆者も慎重であるはずものの)学内の人間関係の構築を強いる―いわゆる「コミュ力」の難を指摘して、その改善をめざす―〈政策的インプリケーション〉を安易に提示してはならないのだろう。人間関係の強調こそがかえって疎外感を強めて、その集団への所属を忌避したくなることもある。「ぼっち」であっても安心して居られる場所の存在、そして、そのことが大学での勉強の継続につながるという道筋を示すことはできないだろうか。たとえば、集団で話しをしながら勉強できるラーニング・コモンズは重要であるのと同時に、そうした賑やかな環境の中で、「ぼっち」ではあるものの居心地のよさを感じながら一人で勉強することを積極的に応援したいのである。それはは一人暮らしの部屋で寂寥感を覚えつつ勉強する状況とは異なるはずである。
人間関係と言ってしまうと、経営学の人間関係論が「現場」に応用されて展開した道のりを思い出してしまって、必ずしもいいことばかりであるとは思えないのである。