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大学と社会 大学と社会

先日、科研費若手研究(B)の交付内定を頂いた。タイトルは「戦後日本の『人事アセスメント』の開発・利用に関する知識社会学的研究」(課題番号25780508)、期間は平成25年度から平成27年度までである*1。前回の若手研究の期間が平成24年度までであったため、引き続き、科研費による研究を継続することができそうである。これで最後の若手研究だ。
研究計画調書には「戦後日本の高等教育の『出口』に関する『試験の社会史』の描き直しの必要性」と記した。身の程知らずにも「試験の社会史」という言葉を使ってしまった―直接のおでしさんならば、とても使えない言葉だろう。初発の問題意識は大学生の生活世界のなかで、トゲの刺さったようなものとして感じられるであろうSPI対策についてである。あの多くの学生を巻き込む営為はいったい何に由来しているのか、わかりたいのである。これまで心理学(産業・組織心理学、教育心理学)の知見を応用して、新規学卒者の採用を目的とする能力検査や性格検査の開発が続けられてきた。将来の職務遂行能力を測定することが目指されたのである。そんな各種検査の理論的背景を理解することはけっして容易ではないにもかかわらず、企業や就職部(キャリアセンター)はそれを受容する―心理測定の分野はほんとうに難しいはずなのだ。同時に、大学における学習成果の指標が存在してこなかったなかで、能力検査はそれを代替する機能をたとえほんのわずかであれ果たしてきた。そうした「人事アセスメント」の開発・利用の歴史的展開を把握することを通じて、検査の有効性が研究の領域、社会の領域の相互作用のなかで正当化されていくメカニズムを知識社会学の観点から明らかにしたいのだ。
言い換えれば、戦後の行動科学それ自体を対象にするような研究である。現在のカレッジ・インパクト研究にしても同様のアプローチで射程に入れたいと考えている。「能力」や「学習成果」を測定する営みはどこまで可能であると考えられてきたのか、測定という営みの性格を慎重に検討したい。「知識社会学」と銘打った以上、その分野への貢献も考えなければならない。今回の助成金額は少なくない―前回は控えめにしておいた。楽な道のりではないけれども、がんばりたい。

*1:エフォートは35%である。他の分担研究の関係上、30%や40%ではなく35%で申請したのだけれども、これは一般的なのだろうか