- 作者: 原武史
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2012/09/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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60年代の団地(日本住宅公団が建設した集合住宅)=革新政党の牙城、ということになっている。確かに先行研究や当時の選挙結果を見る限り、革新政党の支持率は他の土地に比べて高いことが示されている。しかし、そのことは筆者が強調するほど、「コミューン」の成立に向けておどろおどろしい権力闘争がさまざまな団地で繰り広げられていたことを意味するわけではないだろう。筆者は言っていないものの、私にはこの現象を「農村から都市へ」の図式をあてはめて「郊外の団地から都市へ」と読み解こうとしているようにみえるのである*1。公営団地をあえて検討の対象外としてそれよりは所得の高い層に焦点を絞ることで革新政党の戦略を揶揄、団地に「残された」主婦の政治活動についてスキャンダルを引っ張り出して揶揄、革新政党と競争関係にあった宗教政党についてはあまり触れない、こうした論調がどうしても全体を納得できないものに感じさせてしまうのである。
もちろん、とても勉強になったこともある。保育所を作らなかったというような都市計画の偏り、信用するにはまだ研究が必要であるものの団地の立地条件と政治・生活意識との関係性、賃貸/分譲の相違が団地の将来を決めること、これらについてはなるほどと思った。そして、私の「団地経験」からすると生活協同組合の影響をもっと知りたかった。私の80年代の関東地方の団地においては、団地の自治会よりも、多くの団地住民が加入していた生協の方が極めてラディカルな各種の運動を進めていた。生協の店舗入口はトマホーク反対のアジビラで占められていた。時代の違いは当然あるものの、これが一般的なことであったのかどうか気になっているのである(→自分で調べろ!)。
この団地をテーマとした話し、(2)に続く予定である。
*1:「ひばりが丘民主主義を守る会」に参加していた人物に宮鍋幟が挙げられていた。久しぶりに聞いた名前である。