高校の「女性」校長が少ないのはなぜか―都道府県別分析と女性校長インタビューから探る

高校の「女性」校長が少ないのはなぜか―都道府県別分析と女性校長インタビューから探る

明快な問いが示されている―「なぜ女性校長が少ないのか?」。しかし、問いがあまりに単純であるがゆえに、答えを導き出すのはとても難しい。歴史をみても、なぜそのような経緯を辿ったのかがよくわからない。また、統計をみても、相関がわかるだけで因果はわからない。高校の女性管理職比率、地方公務員の女性管理職比率、女性自治会長比率に正の相関があるのはとても興味深いことがらだけれども、だとすると、問いを校長に限定するのではなくて、もう少し職業全般を広くみるようにするべきではないか。
ところどころに「ジェンダー」という言葉が用いられている。そのため、male breadwinner、家父長制、それに類する封建遺制のなんとかに言及があることを期待していたのだが、そうした記述は行われていない。「性差」、「性別」という言葉ではなく、あえて「ジェンダー」を用いる理由が気になるのである。「なぜ女性校長が少ないのか?」、この問いを追及していけば、女性自治会長比率のような言わば表面的なことではなく、まさに厚い蓄積のある「ジェンダー」的視点が必要になるはずである。ただ単に「性差」、「性別」について考えることを「ジェンダー」的視点があるとみなすことに、戸惑いを覚えてしまうのである。