- 作者: 結城康博
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/06/30
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 20回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
日本の社会保障制度が「救貧(弱者救済)的サービス」から「普遍的なサービス」を志向するにつれて、もちろん前者を見限ることなくその両者の特徴を踏まえたしくみの構築が必要であるという(pp.216-217)。競合性―非競合性、排除性―非排除性の2軸の図(p.218)は高等教育政策を検討するうえでも参考になる。たとえば、奨学金については依然として非競合性と非排除性の特徴を持つ「救貧(弱者救済)的サービス」にとどまるだろうし、しかもそれすら十分ではない―競合的、排除的な側面もある。また、進学費用以外のさまざまな理由によって高等教育へアクセスしない/できないということがらについては、「救貧(弱者救済)的サービス」がほとんど機能することなく、競合性と排除性の特徴を持つ「普遍的なサービス」のみが機能しているという理解につながることになるのだろうか。この1、2週間ほど高等教育の市場性という問題について、混乱した議論、粗雑な議論が散見されるので気になっているのである。
また、川上武が引用されていてもう一度勉強したくなってきた。医師の有する「有形の技術」、「無形の技術」、「技能」、これらに相当する教育専門職の有するもの、とりわけ大学教員の有するものはいったい何だろうか。