2012年度夏学期全学共通教育科目「教育と社会」(金曜2限)の一部を担当する予定です―いわゆるリレー講義。第12回「企業内教育の歴史と現在」、第13回「専門職の養成」を受け持ちます。これらのテーマについては、伝統的に本学で呼称されてきた「<教育と社会>の学」のなかであまり言及されることがありませんでした。理由の一つは、1970年代に生涯学習論が輸入された際、企業内教育に対して独特な読み込み方をしていたことにあります。そうしたテーマにならなかったものについて、そのいくつかの理由も含めて検討したいと思います。企業内教育のあり方は、労働、教育、家庭の取り結びに影響を与える重要な要因の一つであって、けっして看過できるものではありません。ただ、ことがらの性格から、男性、大企業、ホワイトカラーに偏った内容が多くなるかもしれません。そのバイアスについては、ぜひ皆さんが厳しく指摘して下さい―そこに含まれない人びとはどうなっていたのか、と。現代の動向についても言及しますので、ある程度は皆さんの実践的な関心に対しても応えられるでしょう。また、現代的な関心として、専門職という概念についても理解を深めたいです。どうやら「高度専門職業人」になるには大学院レベルの勉強が必要そうだし、「専門士」という称号は専門学校でもらえるようだし―その専門学校という呼び方もまた注意が必要、大学内で「教養」の反対語が「専門」だったり…、実はかなりの混乱を招くことがある概念です。さらには、具体的な職業として、弁護士や公認会計士は専門職のように見える一方、アクチュアリーシステムエンジニアはどうでしょうか。セールス&マーケティングと呼ぶと専門職のようだけれども、営業職と言い換えると雰囲気が変わってしまわないでしょうか。こうした印象の理由を教育という文脈に即して考えてみたいと思います。