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三商大 東京・大阪・神戸――日本のビジネス教育の源流

三商大 東京・大阪・神戸――日本のビジネス教育の源流

大学史としては新しい知見があるわけではない。商学経営学)の発展過程として読むとよいだろう。ぜひ、学生の皆さんに読んでほしい。必ずしも一流のものとして認識されるわけではなかった「前垂れ」の学問が、ビジネス・スクールに象徴されるような花形の学問に成長する過程は面白い。ただ、「一橋では『グルントリッヒ』なもの―直訳すれば基本的なこと―という言葉を伝統的に使っている」(44頁)、「現代の大学においても、経済・商学の学部ではゼミナールは人気であって多くの学生が選択しているが、必ずしも必修ではない。必修でないことの起源は、多分東京商大にあると思われる」(49頁)といった指摘が妥当かどうか、その他にも皆さんの経験とは異なる指摘がないかどうか、よく考えながら味読することを勧める。
高等教育論として引き取ると、第1に、「戦後のビジネス教育は有益だったか」(209-12頁)という問いにはもう少し慎重であってもよい。そもそも実際にはビジネス教育をしてこなかったと言うのならば、この問いの設定自体がおかしいことになる。第2に、学会などで江藤智佐子先生と話題にするビジネスの意味についてである。


江藤智佐子、2010、「ビジネス実務担当者に関する研究:日本ビジネス実務学会の組織編成と知識形成をめぐって」『ビジネス実務論集』28。


かつての「秘書教育」が「ビジネス教育」や「ビジネス実務教育」と名前を変えている。副題にある「ビジネス教育の源流」が「三商大」のみにあるとは言えない。もっと豊穣な源流が存在する可能性を捨ててはいけない。第3に、日本のビジネス・スクールの教員は理工系分野や学際的分野の博士号取得者が少なくない点についてである*1。ビジネス・スクールにおいて生まれる知識、伝達される知識に関して詳しく調べてみる必要があるのだろう。

*1:科研の報告書で言及しました。