学生相談室主催の「コミュ力UP合宿inはちおうじ」がみなさんに良かれ悪しかれインパクトを与えているようです。「コミュ力」という概念の暴力性(?)をあらためて認識しました。ここで暴力性というのは、「おまえは『コミュ力』を持っていないからダメだ」と言われているように思わせてしまう力があるからです。しかし、それはまったくの誤解にすぎません。
私の理解では、ここで言う「コミュ力」は高校生のように友だちや彼氏・彼女をつくる力ではありません。企業や官公庁の新入社員研修において強調されるチームワークのようなイメージです。

日本生産性本部
http://www.jpc-net.jp/seminar/2011mindandskilup.html

・ストレスの知識とケアスキルを身につけることにより、モチベーションの維持、およびメンタルヘルス不調の防止につなげる。
・高いコミュニケーションスキルを身に付けるために、「わかりやすいメカニズム」を意識した整理・伝達方法を徹底訓練する。

NECラーニング
http://www.neclearning.jp/training/newcomer.html

ヒューマンスキルは、テクニカルスキルやコンセプチュアルスキルを活かすために必要不可欠なもの。なぜなら、テクニカルスキルやコンセプチュアルスキルを駆使して商品やサービスを創造するのも、また利用するのも共に人間だからです。新入社員IT人材育成研修では、挨拶と思いやりを重視し研修を展開しています。ヒューマンスキルの土台となるのは、相手の立場を理解し、適切な態度を取るマインド。研修中の生活を含めて育みます。

リクルートマネジメントスクール
http://www.recruit-ms.co.jp/open-course/dtl/K1045/pre_type/2/

型だけのビジネスマナーを学ぶのでなく、「相手の期待」を考えて自分の行動を組み立てる姿勢を身につけます。

皆さんは就職後、あるいは、入社前に、こうした研修ビジネスが提供する研修を受けることになるかと思います。そこでは、高い偏差値の大学を卒業していたとしても、鼻をへし折られるかもしれません(笑)。「コミュ力」では漠然としすぎていて何を意味するのかわからないのですが、「わかりやさ」を意識した整理・伝達方法、相手の立場の理解・適切な態度と言い換えれば、それらがビジネスにおいて必要であることが想像できるかもしれません。そして、そこで期待される力は、「コミュ力UP合宿inはちおうじ」の「コミュ力」と案外近いのではないかと思います。ただ、この合宿で、ほんとうに「コミュ力」なるもの―繰り返し主張しますが、ビジネスにおいて必要となるような心構えのようなもの―がUPするのか、私には判断できません。むしろ、実は学術的には懐疑的です。「適切な」コミュニケーションの作法というものは、たとえば、それぞれの企業の文化、社内の立場によって異なることがあるためだったり、容易に忠誠心評価の対象のようなものに堕したりするためです。しかしながら、こうした研修を学生のうちに体験するというのもよいのではないか、とも思います。春休みで、しかも、無料ですし。
合宿には私も参加します。もし、皆さんに関心があれば、夜の暇な時間にでも「コミュ力」を欠いた私がそれでも会社員であることができた理由をお話しします*1。苦手であったとしても、ある種の「型」として理解することはできるのかもしれません。

*1:いまだに学会の懇親会、研究会のタバコ休憩(吸わないけれども)が苦手です。