データの収集、分析の重要性は理解できるものの、それだけで「改善」に繋げるのは危険である。そこに埋め込まれている、あるいは、隠されている理念(たとえば、筆者らも引用するように、IRに影響を及ぼした概念の一つが「効率性」である)を明らかにして、これまで大学が守り続けてきた価値観と照らし合わせる作業が必須である。59頁の図のような工学的な「科学的意思決定」モデルについて、私は説得力があるとは思わない。
ともあれ、文部科学省に就職したい学生は読んでみてはどうだろうか。大学行政において、開拓が不十分な分野である。将来的に、私立大学に天下りして教授になりたいというのであれば(そんなことが可能なのか…、おそろしい世界だ…*1)、たとえば、こうした分野のプロフェッショナルを目指すことを奨めてみるのである。

*1:能力主義とか業績主義とか、そうした論点の一つになりそうだ。