エスリンとアメリカの覚醒―人間の可能性への挑戦

エスリンとアメリカの覚醒―人間の可能性への挑戦

エサレン(エスリン)のクロニクルともいうべきか。マズロー、ロジャーズ、そして、かのestのエアハルトまで、豪華な出演者である。
私はこれまで大きく誤解していた。研究所という名前だけを見て、白衣を着て顰めっ面をしている人びとが、人/動物を対象とした心理実験を繰り返しているという印象を持っていたのだが、まったくそうではないことがよくわかる。西海岸における「あの時代」特有のムーブメントである/でしかない、と理解する必要がありそうだ。
しかし、こうしたところで行われてきた様々なセラピーにおいて、「『いま・ここ』へ関心を持ちなさい」というときの、こころの働きを捉えるための枠組みが腑に落ちない。過去についての人びとの語りを(流行り言葉で言えば「どや顔で」)整理、分析してみせることが得意な分野―「生きられた」といった受け身の表現に馴染んでしまう―にいるため、「いま・ここ」論のとらえどころのなさに戸惑ってしまう。
エサレンのセミナーが温泉のある風光明媚な保養地で行われていたことと、日本の同様の研修が同じく温泉地(熱海、箱根)で行われていたこと、この共通性はやはり「文化的孤島」の意義に通じるのか???。