幸福論――“生きづらい”時代の社会学

幸福論――“生きづらい”時代の社会学

「私たちは人生のアーティスト」は、言うまでもなく皮肉である。「(現代の若者の)生きづらさ」といった表現が、これまであまり事態を適切に表現しているとは思えなかったのだが(だからといって他に良い言葉が見つかるわけではなく、講義ではもどかしい思いをしながら説明しますが…)、バウマンのこの著書で少し掴めたような気がする。
本学が卒業要件としたGPAの件にしても、やはり個人の力や行動の結集という問題の解決法は無効にされている。「みんなでわかってよかったね」のような理想は、もちろんそこには某「コミューン」批判が指摘するような陥穽がないわけではないものの*1、そんなことを懸念する必要がまったくないほど程遠いものとなってしまった。勉強する仲間ではなく、カウンセラーの増員ばかりを期待する議論についていけないのだ。

*1:そういえば、映画『独立少年合唱団』もわかりやすい批判だ。