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大学と社会 大学と社会

格差・秩序不安と教育

格差・秩序不安と教育

先日のある学会で、著者が高等教育改革の担い手である報告者に投げ掛けた疑問の背景の一つは、この文章に表現されている。

  • 教育学者にとってイヤな話をしますが―、社会の経済的・政治的ニーズが、「何を基礎学力とみるか」というのを規定するとして、それを教育学的にかみ砕いて翻案して、経済・政治的色合いを見えなくして押し付けるイデオロギーが必要になる。それが教育学の役割ではないかと思うわけです。〔205頁〕

学生のために、解説を付け加えておく。この指摘は、だから教育学がダメだとか、だから経済的・政治的ニーズが諸悪の根源だ、だからイデオロギーを持ち込むな、などという意味ではない。そもそも教育とはこうした文脈のもとに成立する、という意味である。
「見えなくして押し付ける」ことを拭い去ることはできないのだが、しかし、高等教育研究のなかでは、それへの関心さえ低調ではないか―美辞麗句の改革言説ばかりが並べられる―、という問いかけであったように思える。報告者やその研究協力者の応答は、準備していたものとは大きく異なる位相の問いであったために、十分なものではなかった。それじたいは、学会ではよくあること、仕方のないことである。私としては、報告者だけではなく、高等教育研究者全員に対する、大きな課題として引き取った次第である。