ナショナリズム論の名著50

ナショナリズム論の名著50

読者の知識不足や、いわゆる「素朴理論」を論難するスタイルの法哲学、教育哲学の論文を多く読んできたために(その思考実験に付き合うたびに、ひどく消耗してしまう)、こうしたトピックの文献を無意識に避けてきた。しかしながら、本書の著者らはそのようなスタイルを取らないうえに、非常に丁寧に説明を付していてるために、初学者には難しいのではないかという思い込みは、読むにつれて薄まっていった。
ないものねだりをすれば、教育諸科学において、こうしたナショナリズム論がどのように引き取られて、また、展開していったのかが、よく分からないことであった。教育研究の中には、運動を善とするあまりに、「素朴」なナショナリズム観をいまだに残しているところもある。とはいえ、教育学におけるナショナリズムの論考の蓄積もあるわけであって、編者がどうしてそれらを採用しなかったのか聞いてみたいものである。