学生と変える大学教育

学生と変える大学教育

ひとつひとつの実践は素晴らしいものばかりである。ただし、どうしても「はいまわる経験主義」の高等教育版に見えてしまうものがある。この本に限らず、「すばらしい」実践の紹介は「はいまわる」印象がとても強い。もちろん、それは印象に過ぎないのであって、ただ「はいまわる」だけではない部分をとても知りたい。似たような事例として、先日の某学会で私がテーマとした「社会人基礎力」があるのだが、必ずしも全面的に否定されるべきものとは考えないものの、違和感の一つがモデル大学の実践事例に見られる「はいまわる」感覚なのである。
初等中等教育の研究者と高等教育の研究者の断絶の弊害が、こうしたところに現れてしまう。それにしても、高等教育研究において、初等中等教育の重厚なカリキュラム研究をあまり参考としないのは残念なことである。