かつて一橋大学には、小平分校という「分校」が存在した。日本の大学で分校という呼称を用いるのは珍しい。この小平分校、北海道教育大学の分校とはまったく性格が異なり、すべての学部の1、2年生が当時で言う一般教育を学ぶところであった。住宅街に立地していることもあって、のんびりとした雰囲気だった。国立本校と小平分校を結ぶ1日数往復のマイクロバスも存在していたが、学生は自転車による移動の方が早いといった笑い話もあった。
さて、どんな大学でも、必ずその周囲には学生を対象とした商店があって、そうした商店の存在も含めて大学固有の学校文化が形成されている。小平分校もまた、その周囲には複数の飲食店や小売店があり、昼夜とても賑わいをみせていた。分校の廃止後も多くの商店は営業を継続していたのだが、今月末、その一つの中華料理店が閉店することになったそうである。とてもさみしい。学生向けの大盛りの料理で有名であり、いつも学生でいっぱいだった。昼食を提供していた当時の大学生協は非常に手狭であり、そうした料理店の存在なくしては小平分校は存在し得なかった、と言うのは言い過ぎだが、確かに小平分校は地域に支えられていた。北門を出て真正面の、定食屋の左側の、パン屋の手前の、その中華料理店に今までの感謝を述べたい。