「学士力」答申を目前にして再読。筆者も「たたき台」であると言うように、ますます多くの研究者がこの問題を建設的に「たたく」ことによって、「○○力」大合唱についての理解を深めることが求められる。
ところで、例のSCANSは、幼稚園から高校までを主として対象にしていた。一方、日本においては、職業に直接的に結び付けられた「ポスト近代型能力」言説は、むしろ高等教育に関して盛んである。「○○力」を編み出す手法の多くはSCANSに類似しているのだが(一時期流行していた「ハイ・パフォーマー」に関するコンピテンシー分析などは採用されない―ヘイ・コンサルティング・グループの商売になりそうだが)、対象とする教育段階がSCANSとは異なっている。あまり成功しているようには見えない国の事例を模倣する理由と合わせて、対象のズレを政策過程の課題として検討しなければならない。