これまでの出席回数を教えてください

教員が「私のこれまでの出席回数を教えてほしい」と学生から頼まれて困惑するという話しを伺うことがある。出席回数が単位取得のための条件の一つになっている現代の大学において、そのような依頼を行う学生の気持ちもわかるところである。近年は学生が講義…

法学部における実習などのプログラムが意図するもの

www.js-internship.jp 日本インターンシップ学会紀要『インターンシップ研究年報』23号が届いた。次の論文が法学部におけるアウトカムについて考察するための勉強になった。かつて言われたように「ツブシガキク」から良いということではない、法学部で学習す…

アカデミック教員と実務家教員とのふるまいの違い

菊池美由紀、2020、「ボーダーフリー大学におけるキャリア科目担当教員のストラテジー」『教育社会学研究』107、pp.27-47教育社会学研究 第107集東洋館出版社Amazonこの論文が大変勉強になった。 本稿の目的は、学生の多様化と専門外の教育への対応という二…

学部1年生の新しい人間関係の形成

フレッシュパーソンが新しい友だち作りに戸惑うのは例年のことである。高校生のとき知り合いになっていた人たちとは、趣味・関心、話し方・方言、ファッション、生活時間、お小遣いの有無・学費負担者の有無・バイトの必要性、勉強への取り組み姿勢、将来展…

高等教育と雇用制度の各国比較

欧州の教育・雇用制度と若者のキャリア形成: 国境を越えた人材流動化と国際化への指針作者:昌代, 藤本,麻理, 山内,文香, 野田発売日: 2019/11/22メディア: 単行本タイトルには「欧州」という言葉が使われているものの、実際にはボローニャ・プロセス以降のフ…

コンピテンシー論の再考―要素主義を越えて

大学教育の成果として心理学や経営学で研究されてきた「コンピテンシー」を用いることの難しさ/虚しさについて、院生の頃からずっと考えてきた。そこで、今年の大学教育学会第42回大会(2020年)において、「大学生を対象とするコンピテンシー・ディクショ…

【ご案内】高等教育論セミナー2020秋

このたび、大学事務職員、大学教員、大学院生・ポストドクターの皆さまを対象として、大学教育の職業的レリバンスに関する研究の中間報告会「高等教育論セミナー2020秋『若者の仕事と大学教育―人文系学部・学科出身者の語りから』」を行うことになりました。…

長期インターンシップで「社会人基礎力」が向上するか

「長期インターン最初の約半年で“社会人基礎力”が在籍日数とともに向上、「主体性」「課題発見力」「働きかけ力」「情況把握力」に伸び 〜慶應義塾大学大学院経営管理研究科 岩本研究室×株式会社キュービック産学連携プロジェクト調査「長期インターンシップ…

「運命の皮肉、あるいはいい湯を」

総中流の始まり 団地と生活時間の戦後史 (青弓社ライブラリー)作者:渡邉 大輔,相澤 真一,森 直人発売日: 2019/11/25メディア: 単行本団地へのまなざし―ローカル・ネットワークの構築に向けて作者:岡村 圭子発売日: 2019/12/26メディア: 単行本団地の過去・現…

日本における社会科学系大学院拡充政策の検証

文系大学院をめぐるトリレンマ (高等教育シリーズ 177)作者:吉田 文発売日: 2020/08/19メディア: 単行本(ソフトカバー)新しい書籍が刊行される。私は第3章「社会科学系修士課程大学院生の能力獲得:教員のレンズを通して」を担当した。 かつて、日本は学歴…

2020年度前期教養教育科目「若者と社会」アンケート自由記述

2020年度前期の教養教育科目「若者と社会」において、例年どおり講義期間終了後にアンケートへの回答をお願いしました。約100人の履修者(ほとんどが学部1年生)のうち26人にご回答頂きました。ありがとうございます。 Zoomを利用した〈同時双方向型〉の講義…

学修時間についてのフレッシュパーソンの負担感

今年の全国の大学1年生に関して、宿題が多すぎるという噂を聞くことがある。 ところで、大学は以下に示すような「大学設置基準」という法令に基づいて宿題―授業時間外の学修―を大学生に対して課すことになっている。 大学設置基準 第二十一条 各授業科目の単…

群大ビブリオバトル2020弥涼暮月

sakuranomori.hatenablog.com 本年度も講義でビブリオバトルを実施しました。ただし、昨年度までとは異なって書籍の入手が困難となっている状況が想定されるため、若者に関連する書籍であればコミックやライトノベルなどでも可としました。全16グループのチ…

出席を「とってもらう」ということ

mainichi.jp 「オンライン授業で困っていること」(複数回答)は、1年生は「コンピューターの操作に慣れていない」(62・0%)が最多となり「勉強のペースがつかみにくい」(54・3%)が続いた。2~4年生は「課題が多い」(56・6%)が最も多くなった。 「良…

研究者教員の「管轄権」

実務家教員への招待 人生100年時代の新しい「知」の創造発売日: 2020/03/31メディア: 単行本科研プロジェクトの予習として読む。 そこで実務家教員に期待されるのは、社会のあらゆる場面に遍在する「実践知(暗黙知)」を、教育可能な「形式知」に変換し、体…

科研費「高等教育学関連」

科学研究費助成事業の研究分野申請区分に「小区分09050:高等教育学関連」が設定されてから数年が経過する。そこで、科学研究費助成事業データベースを利用して、「高等教育学関連」で採択された課題の傾向を検討してみたい。小区分を「高等教育学関連」とす…

パソコン初級者のためのオンライン配布資料整理法

(1)まず、フォルダを作る。フォルダとは昔のひと(?)が写真を保存していたアルバムや、紙の資料を挟んでおくファイル、バインダーのようなものである。このウェブサイトがわかりやすいかもしれない。 https://rsmay.com/online_sin/shoumeisho2/body01-…

学部1年生のときに経験したこと

大学1年生のときの学部必修講義「社会科学概論第一」の記憶である。 通年科目、今となっては珍しい1年間で4単位という講義である(なお、小平キャンパスでは「単位」という名称の単位ではなく、「座」という名称が使われていた―単位数にかかわらず、1講義イ…

子ども社会研究から学ぶこと

子どもへの視角―新しい子ども社会研究発売日: 2020/02/20メディア: 単行本(ソフトカバー)著者の皆さま、出版社よりお送り頂きました。執筆者の中には私がかつての勤務先で大変お世話になった大嶋さんもいらっしゃいます。ありがとうございます。 このよう…

在宅勤務に関するメモ

現在は会社勤めをなさっている、私の以前の勤務先での初年次科目履修者が facebook に書き込んでいたメモについて、ご本人の許可を得て転載する。私個人としては④の5「変な時間」が気になってしまう。 最近「在宅勤務」とか「テレワーク」「リモートワーク」…

YG性格検査と学力・知能

先日、部屋の片づけをしていたところ興味深いものが出てきた。私じしんが中学校1年生、中学校3年生、高校3年生の3時点で受けた矢田部ギルフォード性格検査の結果原本である。判定は順に、D型、D型、C型であった。大学1年生でも受けた思い出があるが―わざわざ…

ベンチャーに行った理由

munyon74先生の記事を読んだので、私は反対に「ベンチャーに行った理由」を書いてみる。munyon74.hatenablog.jp大学4年生のときは求人と求職のバランスが大崩れし始めた時期だった。当時、私の出身大学では学部問わず、1つのゼミに7人の学生がいるとするとお…

指導者としての資質・能力:大学の学長編

学長リーダーシップの条件作者:出版社/メーカー: 東信堂発売日: 2019/12/09メディア: 単行本(ソフトカバー)経営学において研究されてきたリーダーシップ論と同じ部分と異なる部分について知りたいと思った。たとえば、金井・高橋(2004)では、観察、イン…

カシオ科学振興財団第37回(令和元年度)研究助成について

casiozaidan.org 公益財団法人カシオ科学振興財団より研究助成を頂戴することになりまして、先日研究助成金贈呈式に出席いたしました。公益財団法人カシオ科学振興財団、選考委員の皆さまにお礼申し上げます。 研究の目的は、地方私立大学の人文系学部・学科…

「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)(中教審第211号)」を読む

50年目の「大学解体」 20年後の大学再生: 高等教育政策をめぐる知の貧困を越えて作者:佐藤 郁哉出版社/メーカー: 京都大学学術出版会発売日: 2018/12/18メディア: 単行本 当然ではあるが、現状把握、政策立案、政策実施の全ての局面に対して「エビデンス・ベ…

高等教育研究者に対する問題提起

広田照幸、2019、『大学論を組み替える―新たな議論のために―』名古屋大学出版会 www.unp.or.jp https://www.amazon.co.jp/dp/4815809674 著者からお送り頂きました。ありがとうございます。 教育に関する社会史や、現代の初等中等教育や生徒・児童の諸「問題…

シグナリングだいすき

大学なんか行っても意味はない?――教育反対の経済学作者: ブライアン・カプラン,月谷真紀出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2019/07/17メディア: 単行本この商品を含むブログを見るシグナリング・モデルによって学業達成と職業・収入との結びつきについて、…

品質保証国家とデータ

測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?作者: ジェリー・Z・ミュラー,松本裕出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2019/04/27メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 「はじめに」に書かれているように、筆者は歴史学者であるものの、大学で管…

「若者と社会」独自授業アンケート2019

2019年度(前期)全学共通科目教養育成科目総合科目群「若者と社会」(2単位)の履修者は約100名でした。この科目は学生による授業評価アンケートの対象外ですので、講義終了かつ成績評価決定後の時点で、独自にアンケートを行いました(回答は任意)。21名…

群大ビブリオバトル2019菖蒲月

sakuranomori.hatenablog.com 昨年度と同様、講義でビブリオバトルを行いました。若者に関連する書籍、ただし若者の定義はそれぞれに任せるという条件で実施した結果、全14グループのチャンプ本は以下のとおりになりました。チーム桐壺強豪校の監督術 高校野…