書籍

半分の学生が単位を落としたとしたら、一番悪いのはそれを教えてた教員だと思う

お送り頂きました。ありがとうございます。大学授業で対話はどこまで可能か: 「21世紀の教養教育」を求めて作者:山田 創平,白瀧 礼奈,入野 美香,南 太貴,小森 弥生,松尾 智晶,三次 亜紀子,中沢 正江ナカニシヤ出版Amazon 京都産業大学で約20年の実績のあるキ…

大学生を対象とするソーシャルワーク

キャンパスソーシャルワーク: 大学における学生支援の必要性みらいAmazon とても勉強になった。これまでも臨床心理士、公認心理師など心理に関する専門職による学生支援は行われてきた。そこでは、心理職の専門分野である心理療法、心理コンサルテーションは…

10年トランジション調査に対する教育社会学者の観点

高校・大学・社会 学びと成長のリアル 「学校と社会をつなぐ調査」10年の軌跡作者:知念渉,中村高康,濱中淳子,板倉寛,真下峯子学事出版Amazon 責任編集者が実施してきた「学校と社会をつなぐ調査」(通称:10年トランジション調査)の発達心理学や青年心理学…

パラドックス定数第39項、第41項、第45項の感想

pdx-c.com 劇団「パラドックス定数」のDVDを複数購入した。とりあえず「第39項 731」、「第45項 Das Orchester」、「第41項 5seconds」の順番で視聴した。この3作には共通するテーマがあるように見えた。 「第39項 731」はそのタイトルのとおり巨大な組織で…

キチョハナカンシャの意味していたもの

就活の社会学作者:妹尾麻美晃洋書房Amazon 本書の問いは「なぜ大学生はやりたいことを語り、また問われるのか?」というものである。2012年から2014年頃に大学生を対象として実施したインタビューの結果を対象として分析を行っている。私の記憶では、この頃…

マジックワードとしての主体性

企業が求める〈主体性〉とは何か:教育と労働をつなぐ〈主体性〉言説の分析作者:武藤 浩子東信堂Amazon 本書の問題意識は冒頭の「はしがき」で次のように述べられている。 しかしながら、社会には〈主体性〉を求める言説が満ち溢れている。〈主体性〉という…

伝統校の「自治」について考えてみる

執筆者の皆さまからお送り頂きました。ありがとうございます。深志の自治 地方公立伝統校の危機と挑戦信濃毎日新聞社Amazon 明治時代から続いている高等学校(高校)の「自治」について検討する意欲的な研究である。教育社会学において高校の研究は花形の一…

いかにも京大からの自由といかにも京大への自由―「イカ京考」

お送りいただきました。ありがとうございます。 honto.jp 〈京大発〉専門分野の越え方: 対話から生まれる学際の探求ナカニシヤ出版Amazon 大学院生が学部生を対象として模擬講義を行うことの具体的な意義は本書において繰り返し説明されていて、それらはとて…

「丁寧な暮らし」という広告宣伝の背景にあったもの

スヴェンスカ・ヘムの女性たち: スウェーデン「専業主婦の時代」の始まりと終わり作者:太田美幸新評論Amazon 著者の太田先生よりお送り頂いた。感謝申し上げます。 学生の頃に勉強したヨーロッパの貧困調査の歴史、社会改良運動、生活協同組合運動などを思い…

意識と行動―「お笑い番組は笑い声が入ったほうが面白い」

影響力の武器[第三版] なぜ、人は動かされるのか作者:ロバート・B・チャルディーニ誠信書房Amazon 経営の実践に関心のある方によく読まれている書籍を復習する。ご商売のセールス現場だけではなく、教育機関でも活用(悪用?)されているかもしれない。私は…

大学生による就職活動に対する評価

選ぶ就活生、選ばれる企業作者:井口尚樹晃洋書房Amazon 大学生の就職活動を対象とした研究であり、その特徴は学生を選抜する企業や官公庁ではなく大学生じしんの認識を対象にしていることである。特に、教育社会学における先行研究に対して次のような新たな…

日本型大衆社会の収縮

低所得層家族の生活と教育戦略 ――収縮する日本型大衆社会の周縁に生きる (生活困難層の教育社会学 大規模公営団地継続調査 1巻)作者:山田 哲也,松田 洋介,小澤 浩明,樋口 くみ子,前馬 優策,長谷川 裕明石書店Amazon この書籍では第1期調査(1989~1992年)、…

さまざまなタイプのレポート課題

著者の皆さまからお送り頂きました。ありがとうございます。思考を鍛えるライティング教育:書く・読む・対話する・探究する力を育む作者:井下 千以子慶應義塾大学出版会Amazon 私が特に関心をもったのは、以前から様々な機会でお世話になっている成瀬先生が…

不登校についての知識のブラッシュアップ

大学院の後輩である樋口先生からお送り頂きました。ありがとうございます。 先生にお会いしたのは私が博士後期課程の頃でした。会社を辞めて修士課程に進学したものの、周囲から研究したいことが理解されずに落胆したまま修士を修了し、再度日中は別の会社で…

群大ビブリオバトル2022年6月

sakuranomori.hatenablog.com 群馬大学教養教育科目「若者と社会」では知的書評合戦ビブリオバトルをオンラインで(Zoom)で実施しています。仲の良い友だちというわけではない、見知らぬ同年代と一緒にネット上でグループ作業を行う練習をするという目的も…

『現場の大学論―大学改革を超えて未来を拓くために』2022年7月刊行

ナカニシヤ出版から『現場の大学論―大学改革を超えて未来を拓くために』が刊行されます。 honto.jp 千葉大学の崎山直樹先生(西洋近現代史)、福井県立大学の渡邉浩一先生(哲学)、そして、二宮祐(高等教育論)が共編者です。崎山先生とは2011年の文部科学…

建築空間に対する社会学による分析

創造性をデザインする: 建築空間の社会学作者:牧野 智和勁草書房Amazon著者からお送り頂きました。ありがとうございます。 本書の課題は次のように提起されている。 本書では、2で整理した先行研究の着眼点と示唆をもっとも包括的に汲み取ることができる理…

授業ってつまらないよね

学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか (ちくまプリマー新書)作者:広田 照幸筑摩書房Amazon 著者からお送り頂きました。感謝いたします。 タイトルは刺激的です。そもそも学校とは何であるのか、そして、何ではないのかについて考えてみたい場合の入門書となってい…

前垂れとグルントリッヒ

実務と教養をつなぐ:秘書教育プログラムの成立と変容作者:江藤 智佐子学文社Amazon 著者よりお送り頂きました。ありがとうございます。 博士論文を加筆・修正したものであり、とても多くの論点が含まれている貴重な研究である。考察の主な対象は副題に示され…

大学院での「学び直し」経験において共通しているもの

学び直しの現象学―大学院修了者への聞き取りを通して作者:岩崎 久志晃洋書房Amazon 本書は、大学院でリカレント教育を経験した社会人を15名を対象とした聞き取り調査のうち、6名の語りを選択して分析したものである。「現象学的な視点から、質的社会調査の生…

促進する・容易にする

ファシリテーションとは何か―コミュニケーション幻想を超えて作者:中野 民夫,中原 淳,中村 和彦,田村 哲樹,小針 誠,元濱 奈穂子ナカニシヤ出版Amazonファシリテーションとは何か コミュニケーション幻想を超えての通販/中野 民夫/中原 淳 - 紙の本:honto本…

「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」

就職と体育会系神話 大学・スポーツ・企業の社会学作者:束原 文郎青弓社Amazon 私(二宮)じしんが大学生の頃も体育会系は就職に有利であると言われていた。しかし、私の周囲にはだからといって、就職のために体育会系の部活動に入る学生はいなかったような…

#専門家が選ぶ新書3冊

あるSNSで話題になっている「#専門家が選ぶ新書3冊」に便乗して、私も3冊を紹介してみる。大学の誕生〈上〉帝国大学の時代 (中公新書)作者:天野 郁夫発売日: 2009/05/01メディア: 新書教育と平等―大衆教育社会はいかに生成したか (中公新書)作者:苅谷 剛彦発…

アカデミック教員と実務家教員とのふるまいの違い

菊池美由紀、2020、「ボーダーフリー大学におけるキャリア科目担当教員のストラテジー」『教育社会学研究』107、pp.27-47教育社会学研究 第107集東洋館出版社Amazonこの論文が大変勉強になった。 本稿の目的は、学生の多様化と専門外の教育への対応という二…

高等教育と雇用制度の各国比較

欧州の教育・雇用制度と若者のキャリア形成: 国境を越えた人材流動化と国際化への指針作者:昌代, 藤本,麻理, 山内,文香, 野田発売日: 2019/11/22メディア: 単行本タイトルには「欧州」という言葉が使われているものの、実際にはボローニャ・プロセス以降のフ…

「運命の皮肉、あるいはいい湯を」

総中流の始まり 団地と生活時間の戦後史 (青弓社ライブラリー)作者:渡邉 大輔,相澤 真一,森 直人発売日: 2019/11/25メディア: 単行本団地へのまなざし―ローカル・ネットワークの構築に向けて作者:岡村 圭子発売日: 2019/12/26メディア: 単行本団地の過去・現…

日本における社会科学系大学院拡充政策の検証

文系大学院をめぐるトリレンマ (高等教育シリーズ 177)作者:吉田 文発売日: 2020/08/19メディア: 単行本(ソフトカバー)新しい書籍が刊行される。私は第3章「社会科学系修士課程大学院生の能力獲得:教員のレンズを通して」を担当した。 かつて、日本は学歴…

研究者教員の「管轄権」

実務家教員への招待 人生100年時代の新しい「知」の創造発売日: 2020/03/31メディア: 単行本科研プロジェクトの予習として読む。 そこで実務家教員に期待されるのは、社会のあらゆる場面に遍在する「実践知(暗黙知)」を、教育可能な「形式知」に変換し、体…

子ども社会研究から学ぶこと

子どもへの視角―新しい子ども社会研究発売日: 2020/02/20メディア: 単行本(ソフトカバー)著者の皆さま、出版社よりお送り頂きました。執筆者の中には私がかつての勤務先で大変お世話になった大嶋さんもいらっしゃいます。ありがとうございます。 このよう…

指導者としての資質・能力:大学の学長編

学長リーダーシップの条件作者:出版社/メーカー: 東信堂発売日: 2019/12/09メディア: 単行本(ソフトカバー)経営学において研究されてきたリーダーシップ論と同じ部分と異なる部分について知りたいと思った。たとえば、金井・高橋(2004)では、観察、イン…