大学と社会

企業が実施する採用テストの開発をテーマとした論文が採択された。先日、掲載決定通知が届いたところである。発行はまもなくのようだ。 二宮祐、2015、「総合検査SPIの開発経緯―1960年代から1990年代までを対象として」『大学教育研究ジャーナル』(徳島大学…

複数の重要な論点が提起されている。そのうち、何が議論の焦点になっていることを整理するために教育社会学理論を思い出してみたい。 http://ci.nii.ac.jp/naid/110009536399 本田伊克、2012、「教育の知識論的・文化階層論的基盤:『教育社会学的教育学改』…

この数週間における各所の高等教育改革構想に関連して、今年の日本高等教育学会課題研究におけるフロアとの質疑応答を思い出している。 フロア:結局のところ、社会は大学教育に何を求めているのですか。私が思うのは………という人材の養成なのですが、先生は…

先日の日本高等教育学会課題研究2「日本の大学院教育を考える(1)―第2期拡張期の帰結―」は100名を超える参加者をお迎えしました。丁寧に議論を深めて頂いた皆さまに感謝申し上げます。 当日は「教員から見た社会科学系大学院教育の現状」というタイトルで報告…

以前のことである。なお、以下の話しは経験をもとに私なりの脚色を加えたものである。 大学内の学生用掲示板に、ある宗教団体の教祖が執筆した本を対象とした読書会を開くという案内のチラシが貼られていた。これまで特に大きなトラブルが報じられることがあ…

先日の大学教育学会で、ある高等教育論の先生から私の個人発表に関する質問を頂戴した。総括討論の時間にお答えを申し上げたものの、すでに先生は退室なさってしまっていた。 質問は「なぜ、『能力検査』ではなく『心理検査』に着目するのか」というものだっ…

『「キャリア教育における『非就労』の位置づけに関する研究」最終報告書』(平成23年度〜平成25年度科学研究費補助金基盤研究(C)』 横浜国立大学の新谷康浩先生より頂戴いたしました。ありがとうございました。 キャリア教育に関する文献を読んでいると、…

リクナビ2015で新たに導入されたOpenESの「紹介文」って…(togetter)リクナビに採用された OpenES の「紹介文」について(早稲田大学キャリアセンター)昨年(2013年)11月頃から私の周囲ではリクナビの OpenES の「紹介文」機能が話題になっている。話題と…

秋季入学について勉強する。 ゼミの配布資料のような要約をつくってみる。 原理原則を踏まえた大学改革を―場当たり策からの脱却こそグローバル化の条件作者: 舘昭出版社/メーカー: 東信堂発売日: 2013/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る …

日本経済新聞2013年6月15日朝刊の1面記事(東京、14版)「大学は変われるか―多様性の先は」のなかに、一橋大学に関して読み手の誤解を誘うような文章が掲載されている。以下、私なりにもう少しだけ正確になるように修正を試みる。 「気弱な男子学生も外見に…

以前にも書いたテーマを再び繰り返す。 修士課程の頃、高等教育懇談会が当初の大学拡充方針を抑制へと転換した理由を調べていたのだけれども、結局明らかにすることができなかった。修士論文では産業界の要請説を取り上げたものの、また、その後の研究では放…

大学教育のグローバル化に関する論点のひとつについて、公立大学、公設民営大学の事例が参考になる。公設民営大学設立事情作者: 高橋寛人出版社/メーカー: 東信堂発売日: 2004/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 公立大学の場合、学生は…

先日、科研費若手研究(B)の交付内定を頂いた。タイトルは「戦後日本の『人事アセスメント』の開発・利用に関する知識社会学的研究」(課題番号25780508)、期間は平成25年度から平成27年度までである*1。前回の若手研究の期間が平成24年度までであったため…

各種メディアで大学の数、学生の数について発言している方ならば答えられるでしょう。 〈クイズ〉 毎年、文部科学省(旧・文部省)学校基本調査報告書は学問分野毎の卒業者数を掲載しています。学問分野を「商学経済学」に限定した場合、卒業者数が最も多か…

予定どおり7月から給与を8%ほど減額されている。私立大学勤務の方から心配のお声を頂戴しているところであった。 本学では平成26年3月31日までの間、一般職、技能・労務職、教育職、医療職すべて、本給は職務の級に応じて4.77%、7.77%、9.77%、地域手当…

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm 中央教育審議会答申(2012.8.28)「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて〜生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ〜」を読んでいる。具体的な改革方策につ…

グローバル人材育成のための大学評価指標―大学はグローバル展開企業の要請に応えられるか作者: 徳永保,籾井圭子出版社/メーカー: 協同出版発売日: 2011/11メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る 企業インタビューで、多くの責任…

昨日のエントリに対して、複数の教育社会学の研究者からコメントを頂いた。ありがとうございます。 能力測定や選抜のあり方に対して吟味すること、適切に操縦すること、これらの必要性に関するご指摘はもっともである。私がこの論点に踏み込めなかったのは、…

来年度の仕事の重責に慄いている。科研だけで、じぶんの科研―一人親方科研―が1点、立場はそれぞれ異なるもののお手伝いしている/することになっている科研が4点。その他の研究、教育、学内行政、社会貢献、しっかりと進めるためには苦手な予定管理に取り組…

http://d.hatena.ne.jp/sakuranomori/20110501 講義を終えて研究室に帰ってきて、上記で紹介した後者の福祉国家に関する文献について大変な事態が生じていたことを知る。全容を理解できていないので何とも言えないのだが、とりあえずこの文献だけに関しては…

2日め。今日は教師節である。日本でもこうした祝日があっても良い。 中山広場から大連理工大学へタクシーで移動―29元。午後は別の大学で仕事を行うべく、路線バス23路に乗車。晩御飯は再び麺類、10元。 大連理工大学のスタッフの皆さまに感謝いたします。 成…

1日め。中山広場から大連理工大学へタクシーで移動―32元。東北財経大学の付近までトラムで移動することも考えたが、時間に余裕がないので断念する。 私が今回参加させていただいた理由は、言わば「正統的周辺参加」を意図したためである。つまり、親方の後ろ…

空港到着後、虹港路の路線バスの乗り場へ向かう。なぜか黒車の声掛けがなかったので拍子抜けしたものの(厳打の状況にあるのだろうか)、軽油と煙草の強い匂い、土ほこりの感触、なぜだか感じる砂糖の甘い香りから、中国の北部へ再び来たことを実感する。子…

OECDの国際成人力調査(PIAAC: Programme for the International Assessment of Adult Competencie)が始まるらしい。完全に失念していた。http://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div03-shogai-piaac-pamph.html成人力とは、「知識をどの程度持っているかで…

大学教育のあり方についていろいろと喋ったり書いたりしているわけだが、それらに関連して他学部の教員から、「貴方はカントを読むべきだ」というアドバイスを頂戴してしまった。公共性 (思考のフロンティア)作者: 齋藤純一出版社/メーカー: 岩波書店発売日:…

感受性訓練―人間関係改善の基礎 (1965年)作者: 関計夫出版社/メーカー: 誠信書房発売日: 1965メディア: ? クリック: 1回この商品を含むブログを見る感受性訓練―Tグループの理論と方法 (1971年)作者: L. P.ブラッドフォード,J. R.ギッブ,K. D.ベネ,三隅二不二…

キャリア教育に関する某報告書をまとめている。TAの原稿の修正に大幅に時間を取らされてしまった。 「売り上げを上げる」という表現は「馬から落ちて落馬する」ようだけれども…、「高い情報力に基づいたビジネス提案→グローバルな需要格差を活かす」という表…

トヨタの知識創造経営作者: 大薗恵美,清水紀彦,竹内弘高出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2008/06/21メディア: ハードカバー購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (4件) を見るリコールは、「組織の成長の痛み」としてしか理解できないら…

教育社会学におけるトランジッション研究では、「学校等の行う無料職業紹介事業」の根拠として職業安定法の存在を挙げてきた。教育機関は、職業紹介を行うことが例外的に認められてきた。これは、「現場」では当たり前のことにすぎないのだが、研究の世界で…

日本型信頼社会の復権―グローバル化する間人主義作者: 浜口恵俊出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 1996/12メディア: ハードカバー クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る70年代の流行を確認する。この種の経営文化論、最近はあまり見かけな…